AIやクラウドコンピューティング用途の需要が急増するなか、今週、アジア太平洋地域で少なくとも56億ドル(約8232億円。1ドル=147円換算)のデータセンター取引が成立した。アマゾンからグーグルに至る世界のテック大手が拡大を続けているためだ。
ボストンに本拠を置くプライベート・エクイティ(PE)ファームのベイン・キャピタルは水曜日、中国にあるデータセンター施設のポートフォリオ(WinTrix DC Group[ウィントリックス・DC・グループが所有)を、Shenzhen Dongyangguang Industry(シンセン・ドンヤングアン・インダストリー)が主導するコンソーシアムに40億ドル(約5880億円)で売却することで合意したと発表した。同時に、シンガポール政府系投資会社のGIC(ジーアイシー)とAbu Dhabi Investment Authority(アブダビ投資庁、ADIA)が、ニューヨーク上場のDigitalBridge Group(デジタルブリッジ・グループ)が支援するVantage Data Centers(ヴァンテージ・データ・センターズ)に16億ドル(約2352億円)を投資している。
WinTrix DC Group(旧称Chindata Group Holdings[チンデータ・グループ・ホールディングス])は、中国での顧客にTikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)を抱え、北京、長江デルタ、グレーターベイエリアで複数のデータセンターを運営している。インドとマレーシアにも拠点を有する。
「チンデータは、比類のない規模と技術力を備えた、中国のデジタル・インフラの主要プラットフォームの1つへと進化しました」と、ベイン・キャピタルのパートナーで中国会長のジョナサン・ジューは声明で述べた。
一方、Vantage Data Centers(ヴァンテージ・データ・センターズ)は、GICとADIAからの新規資本により、Sedenak Tech Park(セデナック・テック・パーク)にあるYondr Group(ヨンドル・グループ)のデータセンター(合計容量300メガワット超)を取得する計画を支援すると述べた。同パークは、シンガポール近郊のマレーシア南部ジョホール州にある成長著しいデジタル・インフラ拠点の1つである。買収完了後、ヴァンテージはアジア太平洋全体で1ギガワットの容量を有することになる。
「GICとADIAの支援により、当社はこの地域における持続可能なAIおよびクラウドのデジタル・インフラを提供する最大級の事業者の1つとして位置づけられています」と、ヴァンテージのアジア太平洋プレジデント、ジェレミー・ドイッチは述べた。
アジア太平洋におけるデータセンターの取引は、ここ数カ月で急増している。アマゾンは今月初め、ニュージーランドでのクラウドコンピューティング基盤の拡張に向け、75億ニュージーランドドル(約6600億円。1ニュージーランドドル=88円換算)を投資すると発表した。先月には、アジアで最も裕福な人物であるムケシュ・アンバニが率いるReliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)が、インド西部のグジャラート州にギガワット級のデータセンターを建設する計画を明らかにすると同時に、グーグルおよびフェイスブックの親会社メタと提携してAIアプリケーションを開発すると発表した。
「この地域で新規案件が大量に生まれているという事実そのものが、世界のデジタル・インフラのなかで同地域の重要性がどれほど高まっているかを物語っています」と、ロンドン拠点の不動産コンサルティング会社Knight Frank(ナイト・フランク)でアジア太平洋のデータセンター部門責任者を務めるフレッド・フィッツアラン・ハワードは声明で述べた。彼は、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトの米国テック大手が、同地域のデジタル・インフラ拡張のために今年だけで1600億ドル(約23.5兆円)超を投資していると指摘した。



