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2025.09.13 11:00

1年で資産が合計3兆円増加、最も裕福な米国の「ヘッジファンドマネージャー」10人

ケン・グリフィン(Taylor Hill/Getty Images)

ケン・グリフィン(Taylor Hill/Getty Images)

ここ3年間の株式市場の高騰は、多くの勝ち組を生み出した。

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ヘッジファンドの多くは、AIブームを追い風にした株高に乗り切れず、リスクを抑えた運用にとどまってきた。それでも投資家からの資金流入は続き、運用益やキャリー(成果報酬)によって、オーナーたちは巨額の資産を上積みした。

米国で最も裕福なヘッジファンドマネージャー10人の資産の合計は1740億ドル(約25兆7000億円)で、1年前から200億ドル(約3兆円)増加した。中でもシタデルのケン・グリフィンの資産は74億ドル(約1兆1000億円)以上増えて504億ドル(約7兆4400億円)に達し、他を大きく引き離した。これに続く3人──アパルーサ・マネジメントのデービッド・テッパー、ポイント72のスティーブ・コーエン、ミレニアム・マネジメントのイスラエル・イングランダー──の資産の増加分は、それぞれ平均30億ドル(約4430億円)程度だった。

この4人のリターンはいずれも2024年に2桁を記録し、大型ヘッジファンドの動向を示すHFRI 500指数(6.2%)を上回った。同指数の過去3年間の平均年率リターンは4.6%にとどまり、同期間のS&P500の16%に大きく見劣りしている。

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こうした低調な競争環境の中で、トップクラスのファンドは投資家離れを招くことなく高い手数料を課している。シタデル、ミレニアム、ポイント72などは近年、より多くの運用コストを顧客に負担させる「パススルー」方式の手数料制度を導入または拡大し、従来からのヘッジファンドの定番である運用資産残高に対する2%の管理報酬を超えるコストを投資家に負担させている。

これらの大手は数千人規模のスタッフを抱えており、コストは高いが十分な成果を上げている。シタデルの旗艦ファンド「ウェリントン」は1990年から2024年まで、手数料控除後の年率平均リターンが19.5%に達した。ミレニアムも1989年の設立以来の年率平均リターンが14%に上り、マイナスとなったのは2008年の1年だけだ。

大手ファンドの多くは新規投資家の受け入れをほぼ停止しており、既存のリミテッド・パートナーに利益を還元しながら、規模を抑えて運用成績を維持している。しかし、その手法をまねるファンドは後を絶たず、Hedge Fund Researchによれば、今年第2四半期のヘッジファンドへの純資金流入額は250億ドルに達し、11年ぶりの高水準となった。

それでも、新興勢力と最先端の「マルチストラテジー型ファンド」との格差は広がっている。LCH Investmentsによると、シタデル、D.E.ショウ、ミレニアムの3社は2024年に295億ドル(約4兆3700億円)の純利益を上げ、ヘッジファンド業界全体の2890億ドル(約42兆7000億円)の純利益の1割超を占めていた。これらの大手の創業者たちは長年にわたりフォーブスの米国版長者番付「フォーブス400」の常連となっている。

下記に、今年の「フォーブス400」に登場した米国のヘッジファンド界のビリオネアの上位10人を掲載する(資産額は2025年9月1日時点のもの)。

ケン・グリフィン

資産額:504億ドル(前年比+74億ドル)/運用会社:シタデル

ケン・グリフィン(Taylor Hill/Getty Images)
ケン・グリフィン(Taylor Hill/Getty Images)

運用資産が680億ドル(約10兆円)を超えるシタデルは、ヘッジファンド業界の羨望の的となっている。しかし、グリフィンの資産の大部分を占めるのは、別会社のマーケットメイク企業シタデル・セキュリティーズの過半数株式だ。同社は昨年、97億ドル(約1兆4300億円)の純取引収入を計上した。

グリフィンはその利益の一部を不動産と趣味のコレクションに費やしており、2月には「フォーブス400」に名を連ねるジュリア・コークが所有していたパークアベニューのコープ住宅を4500万ドル(約66億5000万円)で購入した。さらに、リンカーン大統領が署名した奴隷解放宣言と憲法修正第13条の稀少な写本を1800万ドル(約26億6000万円)で手に入れている。これらの歴史的文書は、2026年の米国建国250周年記念行事に先立ち、一般公開のために貸し出す予定だ。

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翻訳=上田裕資

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