企業の地方創生への関心は一定程度あるものの、実際の行動には大きなハードルが存在するようだ。株式会社月刊総務が総務担当者154名を対象に実施した調査によると、62.4%の企業が地方創生に関心を示す一方で、実際に取り組んでいるのは33.7%にとどまることが明らかになった。関心と行動の間に約30ポイントのギャップが存在し、企業の地方創生をめぐる複雑な実情が浮かび上がった。


「地域連携」が最多も成果測定に課題
実際に地方創生に取り組んでいる企業の活動内容では、「地域の企業・団体との連携事業」が55.8%で最も多く、「地元人材の採用・育成」(46.2%)、「地域のイベント・教育活動への協賛」(42.3%)、「地方拠点への進出・オフィス展開」(28.8%)が続いた。

しかし、地方創生を進める上での最大の課題は「成果の見えづらさ」(55.2%)だった。続いて「担当者の負担が大きい」(40.9%)、「推進体制が不明確」(37.7%)となり、多くの企業が投資対効果の測定に苦慮している実態が明らかになった。

「余裕があればやりたい」が本音
地方創生に取り組まない理由では「リソース不足」(30.4%)が最多となった。「自社には関係が薄い」(28.4%)、「経営層の理解・関心が低い」(27.5%)、「自社にとっての必要性を感じていない」(25.5%)も上位に入り、地方創生が余裕があればやりたい施策として位置づけられている企業が多いことがうかがえる。
また「何から始めればよいかわからない」(23.5%)と「効果が見えにくいため優先度が低くなっている」(23.5%)が同率で続き、具体的な取り組み手法の不明確さと成果への不安が企業の行動を足踏みさせているようだ。

ブランド価値向上への期待も
地方創生に取り組む理由では「地域課題の解決による社会貢献」(69.2%)が最多となったが、「企業のブランド価値向上」(44.2%)、「地方人材の採用・育成」(38.5%)を理由に挙げる企業も多く、CSRの枠を超えた戦略的な効果を期待する声も目立った。

実際に取り組みを進めている企業からは「地域の現状やニーズを知ることができた」「社員が地域とのつながりを意識するようになった」といった具体的な変化も報告されている。
今後注目している分野では「地域の企業・団体との連携事業」(45.5%)が最多となり、「地元人材の採用・育成」(37.0%)、「地域のイベント・教育活動への協賛」(31.2%)が続いた。実際の取り組み内容と同様の傾向を示しており、現状維持を選ぶ企業が多いようだ。

6割の企業が関心を示しながら実際の取り組みは3割という現実は、多くの企業が「やりたい気持ちはあるが踏み出せない」状況にあることを示している。成果が見えにくいという課題は確かに存在するが、既に取り組んでいる企業からは地域との新たなつながりや社員の意識変化といった声も聞かれる。
ただ、この調査結果からは、地方創生に対する認識のギャップが各所に存在する可能性がうかがえる。政府が推進する政策としての地方創生と、企業が考える地方創生、そして地域住民が期待する地方創生が、実は違うものを指している可能性もあるのではないだろうか。
関係者それぞれが具体的に何をすべきかで迷いのある現状は、そもそも地方創生という概念自体の曖昧さを表しているのかもしれない。
【調査概要】
調査対象:全国の総務担当者154名
調査期間:2025年7月9日~2025年7月16日
調査方法:Webアンケート



