キャリア・教育

2025.09.18 09:00

アマゾン創業者やエヌビディアCEOが語る ファストフード経験が育てた経営の原点

ジェフ・ベゾス(Photo by Christopher Polk/WWD via Getty Images)

ジェフ・ベゾス(Photo by Christopher Polk/WWD via Getty Images)

高校生がファストフード店で働くことは日米ともに珍しいことではない。ただ米国では趣が異なり、若者にとって通過儀礼といった位置づけを持ち、親世代も同じ経験をしていることが多い。米国では、低賃金で単調に見える作業の中に、在庫管理や効率化、顧客対応といったビジネスの基礎を学ぶ機会があると社会的に認識されているのだ。そのため米国の著名ビリオネアが、自らの成功の原点としてファストフード店でのアルバイト経験を語るのは不自然ではない。実際、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスやエヌビディアのジェンスン・フアンCEOもその1人だ。本稿では、米国社会に根付いたこの文化と、それがどのように世界的な起業家を育てる土台となったのかを探る。

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16歳のジェフ・ベゾスがマクドナルドで学んだ、顧客重視とシステムの重要性

1980年の夏、ひょろりとした16歳のジェフ・ベゾスはマイアミのマクドナルドに足を運び、応募用紙に記入して人生初の仕事を得た。「父も若い頃にマクドナルドで働いていたから、ある意味で通過儀礼のようなものだった」と彼は振り返る。厨房スタッフとして、ベゾスは1日に300個の卵を割り、ハンバーガーを焼き、トイレを掃除していた。

巨大な容器からケチャップが床一面にこぼれたとき、それを片付けたのもベゾスだった。「私はその店で一番下っ端だった」と彼は回想する。その時の経験は、ヴェネツィアで2000万ドル(約29億円。1ドル=146円換算)の結婚式を挙げたり、宇宙旅行に出かけたりする後年の華やかな人生とは程遠いものだったが、彼はそこから大事な教訓を学んだ。今では61歳になったベゾスは「仕事に上も下もない」と語り、「人は誰でも早いうちから努力する習慣を身に付けるべきだ。特別な仕事が来るのを待っていてはいけない」と付け加えた。

マクドナルドでの経験はまた、ベゾスにシステムへの執着を植え付け、業務を効率的に回し、顧客に徹底的に向き合うことの重要性を教えた。「ティーンエイジャーの頃から、緻密な設計こそが全体を支えていると気づいていた」と彼は語る。「マクドナルドでは仕組みの一部が崩れると、すぐに現場全体に影響が出る。その経験で、プロセスがすべてを左右すること、良いシステムがあれば誰でも大きな成果を出せることを確信した」。

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ファストフードでの経験が需要の分解と効率化につながった

マクドナルドの制服を脱いでからの数十年で、ベゾスはこの教訓を生かし、アマゾンを米国最大のEコマース企業に育て上げた。同社は現在、100万人以上を雇用し、125以上の国と地域に広がる物流帝国を築いている。

「アマゾンは顧客の需要を起点に動く会社だ」と、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)でデータセンターの計画と運営を担当するマシュー・デイビスは語る。「ベゾスはマクドナルド時代に、需要を細かく分解して考える発想を学んだ。たとえばハンバーガーを300個作るなら、バンズもパティもチーズもそれぞれ300個ずつ必要になる。AWSも同じだ。顧客が求める電力量を基に、必要なラックの数や建設すべきデータセンターを逆算する。要は『何がどれだけ必要か』を見極め、どうすれば最も効率的に届けられるかを考える。この発想の原点はファストフードにある」。

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翻訳=上田裕資

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