資産運用

2025.09.15 15:00

円安だけでは終わらない。トップアナリストが読むインバウンドの新局面

eamesBot / Shutterstock.com

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市場関係者が注目する旬のテーマといえばAI・半導体とインバウンドだ。国内トップクラスのアナリストが今後の展望を解説する。

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半導体業界は「シクリカルグロース」が継続 巨額投資の次世代AIプロジェクトがけん引

半導体関連銘柄は、これまで何十年もそうだったように、世界の景気が上向けば大きく成長する「シクリカルグロース」が今後も続くと思っている。それほど半導体の成長力は力強く、魅力的な投資対象だ。

現在の市場活況は、2023年に本格的に普及し始めた生成AIが加速させている。さらに、米オープンAIなどによる「スターゲート」をはじめ、10兆円規模の投資計画が複数進んでおり、ここから新たな技術や市場が生まれると期待されている。20年代後半は、巨大な次世代AIプロジェクトが半導体業界をけん引していくだろう。

昨年、世界の半導体の市場規模は100兆円近くにまで拡大した。中長期的な年平均成長率(CAGR)は10%以上と予想している。一方で、日本の場合は半導体自体の競争力は低下しており、世界シェアも10%ほどに落ちてしまった。このテーマで買うならば、まだまだ日系が強い半導体製造装置や半導体材料の銘柄になる。国際競争力や収益性が高く、経営判断も早い優秀な企業が多いのが特徴だ。世界の半導体製造装置の市場規模は約15兆円で、こちらも年平均10%以上の成長が見込めると考えている。

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気になる「トランプ関税」の影響はどうか。熊本県に半導体受託生産の世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」が進出したが、新工場建設が当初予定より遅れている。これは、トランプ政権の意向で米国の新工場を優先的に建設するためだといわれている。また、「関税の影響で電子機器の需要が冷え込む」「関税率が決まるまで企業は大きな投資の意思決定ができず、マイナスだ」などといわれていたが、現時点では目立った影響はなさそうだ。「懸念」という意味では、今年初め、中国のAIスタートアップ「DeepSeek(ディープシーク)」が新たなAIモデルを公開したことに端を発し、AI向け半導体大手エヌビディアなどの株価が暴落した「ディープシーク・ショック」が記憶に新しい。

大騒ぎとなった原因は、ディープシークがより少ない半導体で、超低コストかつ高性能なLLM(大規模言語モデル)をつくったとの触れ込みがあり、AIの学習に必要な先端半導体の需要が激減するのではないかとの憶測を呼んだためだ。だが実際には、ディープシークのモデルは既存の生成AIをベースにしてつくっていたため、「革命」と呼べるほどのものはなかった。今市場では、ディープシークの開発手法はむしろLLMの裾野を広げる可能性があり、半導体業界にとって「悪い話ではない」という認識に変わっている。

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文=古賀寛明、加藤智朗

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