企業間格差が広がる
さて、25年以降もこの状況は続くのか──。訪日客数はすでに高水準で推移していて、伸び率は緩やかになるがブームが終わったという状況ではない。一方で、円高進行を受けてラグジュアリーブランド各社が相次いで値上げを実施し、内外価格差が縮小。この影響は百貨店の免税売上高に顕著に表れている。日本百貨店協会の発表によれば、全国の百貨店の3月の免税売上高は前年同月比10.7%減と、22年3月以来、3年ぶりに前年の数字を下回った。
韓国、台湾、香港などの東アジアからの客は日本への訪問回数が多いリピーターが中心で、円高進行が続けば行ったことがある日本よりも目新しいほかの旅行先を選ぶ可能性もある。ただし、為替については米トランプ政権の政策に大きく左右されるため、予測は難しい。
一方で、百貨店以外への為替の影響は限定的で、PPIH、ABCマート、マツキヨは免税売り上げが堅調に推移している。ABCマートで免税購入されるのは有名ブランドのスニーカーが中心だが、免税後ならば20%程度の内外価格差が残っているものもある。また、円高とはいえ、食事や宿泊費を含めた日本の物価は依然として割安で、特に欧米からの観光客にとっては魅力的だ。
今後注目すべきは、企業間格差の拡大だろう。「爆買い」が流行語となった10年前もそうだったが、これまでは企業の努力にあまり関係なくインバウンドの関連企業は恩恵を受けてきたふしがある。しかし、訪日客のリピーター化が進むなか、単に受け身で待つのではなく、積極的に購買力のある顧客と接点をもち続けることが重要になる。百貨店各社は、すでに取り組みを始めており、三越伊勢丹ホールディングスは25年3月に海外顧客向けアプリの提供を開始した。J.フロントリテイリングもアプリの多言語対応を進め、外国籍ユーザーが8万人に達している。
インバウンド銘柄を見るにあたって、投資家は為替変動に一喜一憂するのではなく、各企業の顧客獲得・維持戦略に注目すべきだ。特にデータの活用によって顧客と継続的な関係を構築できる企業が、今後のインバウンド市場で勝ち残る企業となるだろう。
金森 都◎SMBC日興証券シニアアナリスト。野村アセットマネジメント、アライアンス・バーンスタイン、アマゾンジャパンを経て現職。2025年の「人気アナリスト調査」日経ヴェリタス)インバウンド部門1位。


