サイエンス

2025.09.12 09:30

砂漠化を止められるか? 中国の「緑の長城」プロジェクト、成功宣言の陰で残る課題

Fabio Nodari/Getty Images

期待が持てる可能性も

後退を余儀なくされるケースもありながらも、「緑の長城」に関しては、具体的な進展がみられる分野もある。近年の有望な変化としては、戦略の多様化がある。

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中国政府は、新規の植林のみを頼りとするのではなく、既存の植生を守ることにより力を入れ始めている。特に注目されているのが、もともと乾燥した気象条件への耐性を持つ草地や、現地に固有の灌木が生えている土地だ。こうした生態系であれば、必要とされる水が少なくて済むだけでなく、より幅広い生物多様性の実現を可能にし、長期的には、より安定的な炭素貯蔵がかなうというメリットがある。

近頃の中国ではソーラーファームを通じて、再生可能エネルギーを電源構成に加える動きも勢いを見せている。こうした発電設備は、再生可能エネルギーを供給すると同時に、砂嵐の風速や土壌からの水分蒸発を抑えることも可能で、植生の生育により適した条件を作り出すというメリットもある。

一部には、ソーラーパネルの下でカンゾウのような薬草が栽培されている事例もあり、土壌を改良すると同時に、住民に追加の収入源を提供することも可能になっている。

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そんな中で主要な課題になっているのが、壮大な計画の理想と、現実的な環境保護のあいだのバランスだ。内モンゴル自治区のドロンノール県のように、かつては面積の大部分が砂で覆われていた場所であっても、戦略的な緑化によって、森林に覆われた土地の占める割合を増やすとともに、砂丘の移動を防いで安定化させることに成功した地域もある。しかし、さらに乾燥の激しい地域では、水理学に基づいた計画なしに、やみくもに成長の速い種を植えると、そもそも「緑の長城」が守る対象だった生態系が損われるリスクがある。

それでも、中国の植林プロジェクトは進化してきた。確かに初期段階では、世間からの見栄えの良さや統計値を優先していたかもしれないが、近年の動きからは、状況に合わせて学習していることがうかがえる。

具体的には、その土地により適した種の選択、地元の水系との統合の進化、長期的な持続可能性の実現により即した、さまざまな土地利用形態の採用などだ。

その意味では中国の「緑の長城」は、むしろ学んで成長していくプロジェクトと言えるだろう。そして、気候と生物多様性に関する危機的状況を脱しようとして、世界中で先を争うように植林が進んでいる現状を考えると、このプロジェクトから得られた教訓は、実際に植えられた森林以上の価値を発揮する可能性もある。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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