サイエンス

2025.09.10 18:00

​​体重170kgで骨髄を喰らう、先史時代の北米を支配した「恐るべきイヌ科動物」が絶滅した理由

Daniel A. Leifheit / Getty Images

エピキオンは天下をとっていた──ネコ科動物が現れるまでは

進化上の大きな利点を備えていたにもかかわらず、エピキオンやボロファグス亜科の近縁の天下は、北アメリカでのネコ科動物の出現と多様化により、困難に直面することになった。

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およそ1850万年前、ネコ科動物がユーラシアから北アメリカに移動し、リソースをめぐる新たな競争が勃発した。プセウダエルルスなどのネコ科の捕食者は、それまでイヌ科が支配していた生態系に、異なる狩りの戦略と、身体的な適応をもたらした。

ネコ科動物は、出し入れできる鉤爪、柔軟な体、肉を切り裂くのに適した特殊化した歯を備え、単独で効率よく狩りをすることができた。

ネコ科の狩りのテクニックは、ボロファグス亜科の骨を砕くやりかたとは大きく異なっていたため、異なる生態的ニッチを開拓することができた。この2種類の捕食者グループが共存した結果、獲物をめぐる競争が激しくなり、進化の道筋が永遠に変わった。

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だが、エピキオン絶滅の原因はネコ科動物だけではない

エピキオンをはじめとするボロファグス亜科のイヌ科動物が衰退した時期は、大きな気候変化の時期と一致している。この気候変化により、北アメリカの生態系が徐々につくりかえられ、獲物になる種の分布も変わった。

草地が広がり、森林が後退するのに伴って開けた地形になり、それが新しいイヌ属の初期メンバーのような追跡型の捕食者に有利にはたらいた。同時に、エピキオンのような、待ち伏せ型もしくはパワー依存型のハンターには大きな不利益になった。

また、多様化を続けていたネコ科動物も、獲物をめぐる直接的な競争をいっそう激しくした。ボロファグス亜科の動物とは違って、出し入れできる鉤爪をもつネコ科動物は、正確に攻撃の狙いをつけ、がっちり獲物をつかむことができる。さらに、ネコ科動物の骨格構造の方が、瞬発的なスピードで大型の獲物を捕獲することにはるかに適していた。

極めて特殊化した犬歯(剣歯)を持つネコ科動物であるサーベルタイガーの出現も、捕食競争を激化させた可能性がある。サーベルタイガーは、強力な前肢と、短剣(サーベル)のような犬歯によって大型植物食動物を仕留める能力のおかげで、捕食という点で、ボロファグス亜科のイヌ科動物よりも優位に立った可能性がある。

ボロファグスを含むボロファグス亜科の最後の生き残りは、鮮新世後期の250万~200万年前までに姿を消した。数百万年にわたって北アメリカの肉食動物界を支配していた系統が終わりを告げることとなったのだ。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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