韓国でも「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来(あかざさいらい)」が、映画興行界の常識を吹き飛ばしている。
日本では公開から45日間で興行収入が299億円超、観客動員も2110万人の大ヒットを記録しているが、8月22日から劇場公開された韓国でも、18日間で興行収入が37億円、観客動員も400万人(9月8日現在)を突破した。最近の韓国の映画界では動員数400万人というのが精いっぱいのなか、この勢いは凄まじい。
コロナ禍以降、ネットを介したOTTサービス(Over-the-Top media service)に観客を奪われつつあった映画興行界にとっては、まさに「救世主」として現れたかたちだ。
この「鬼滅の刃」の最新作は、韓国では、公開前から予約争奪戦も異常だった。前売券は92万枚、ボックスオフィスで15日間連続第1位(9月5日現在)となり、朝からポップアップストアやグッズ売り場には行列ができ、限定品は即完売。SNSは「欲しかったグッズが買えなかった!」「やったぜゲットした!」などファンの熱狂的な投稿で埋まった。
「鬼滅の刃」をめぐるお決まりの論争
とはいえ「鬼滅の刃」をめぐっては、韓国ではその爆発的な人気と同時に必ずお決まりの論争が巻き起こる。
それは主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が着用する耳飾り(ピアス)が戦争時代の旭日旗を連想させ、作中に登場する「鬼殺隊」が学徒兵を連想させるということだ。さらに、「大正時代」という物語の舞台設定などが、日本の帝国主義や軍国主義を想起させ、それらを美化しているのではないかという一部の声もある。そこで韓国では、過去に何度も「右翼アニメ」というレッテルも貼られてきた。
こうした状況も踏まえ、韓国でテレビアニメとして放送された際には、炭治郎の耳飾りデザインは修正され、旭日旗模様を弱めるために線の本数や向き、意匠全体を変更する配慮がなされてきた。劇場版やNetflixの配信版でも韓国向けには同様のデザイン修正が行われている。
さらに、こんなハプニングもあった。2025年8月9日にプロモーションイベントとして韓国プロ野球のLGツインズとハンファイーグルス戦で、「鬼滅の刃のキャラクター始球式」があると公表された途端、8月15日の光復節の1週間前だというのに何事かと、ファンや一部の人間からの批判が殺到した。
「光復節」というのは、日本の統治から脱して主権を取り戻した日なので、そんなときに戦争時代を思い起こさせる「鬼滅の刃」をキャラクターで使用するのは問題なのではないかという反発であった。結局、キャラクター始球式は中止となった。



