1000種類のAIアシスタントが稼働
新たなマグマも見つけつつある。目指すのは、CIOやCTO、情報システム部門を鬱屈から解放することだ。限られたリソースを既存システムのメンテナンスやITガバナンスのための作業などに使わざるをえず、経営層や社内のエンドユーザーから存在意義を理解されづらい傾向にあると見る。M&Aを拡充するリソースも投入し、彼らが高付加価値な仕事に専念できる環境づくりを支援していく。
具体策として、SaaS/IT資産管理ツールを無償提供し、2400社のユーザー基盤から40億円規模のBPO受注につなげている。さらに、DXの阻害要因となるレガシーシステムの刷新支援にも注力。「IT予算の8割がレガシーシステムの非効率なメンテナンスに消えている一方、刷新は手間がかかり評価もされにくい。コンサルやSIer側も、SI市場の8割はこのレガシーマイグレーションになっていくのにあまりやりたがらないんです」と丹下はチャンスを見いだす。
これらの取り組みを爆発的な成長につなげるポイントになるのが、前述のM&Aによるリソースの拡充、そしてAI活用による生産性の向上だ。例えばレガシーマイグレーションでは、レガシーシステムのソースコードを分析し、モダンなアーキテクチャーに変換して実装するところまでをAIで効率化する独自のシステムを開発。「コストは従来の半分、納期は3分の1に圧縮できる」という。テスト事業を開始したときと同じように、ニーズは大きいが競合が少なく、SHIFTのノウハウと技術力を生かせる領域としてとらえているようだ。
社内業務でも1000種類以上のAIアシスタントが稼働しており、商談記録や採用面接の分析、検定試験作成のための業務分析など、さまざまな場面で活用が拡大しているという。これらの取り組みの成果はBPOの生産性向上というかたちで顧客に還元する。
これらの取り組みの先に見据えるのは、単なる大手SIerではない。仕組み化とAIの成果をサービスとして開放し、顧客が本業にのみ集中できる環境を提供する、壮大なビジネスプラットフォーム構想だ。
「人口が減っていくなかで日本の企業が成長するには、まず販管費を減らすしかない。私たちが顧客の非コア業務をすべて引き受け、本業に集中してもらう。いわば『株式会社日本』のフルアウトソーシング会社になる。そのための布石は、もう打ってある。あとはひたすらやるだけです」

たんげ・まさる◎1974年、広島県生まれ。2000年、京都大学大学院工学研究科機械物理工学修了後、インクス(現SOLIZE)に入社。3人のコンサルティング部門を5年で50億円、140人のコンサルティング部隊に成長させけん引。2005年9月、同部門マネージャーを経てSHIFTを設立。代表取締役に就任。2019年10月、東証マザーズ市場から東証一部に市場変更。


