欧州

2025.09.08 09:30

ウクライナの若き退役軍人、戦後の国家再建に向け早くも始動

ウクライナ首都キーウ郊外のブチャで、戦術訓練を受ける女性兵士。軍隊に入隊する以前は医師だった。2024年7月6日撮影(Andriy Dubchak/Frontliner/Getty Images)

チャパイロとモヒラ・アカデミーの同窓生マリヤ・サブルンは、いずれも30代半ばで蜂蜜色の髪をした女性だ。2人は流れに逆らうことを承知で、1年ほど前に同プログラムを立ち上げた。かつてIT企業でマーケティングを担当していたサブルンは「すべてのウクライナ人が祖国の防衛者に感謝している。防衛者がいなければ、私たちはここにいなかっただろう」と言う。他方で、社会には数多くの誤解があると指摘する。例えば、一般市民の中には、すべての退役軍人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていると考えている人もいる。上司にとっては精神疾患を患う部下を懲戒しにくいことから、人事担当者の多くは退役軍人の採用を避けたがるのだという。チャパイロは、「この話題を恐れる必要はないということを人々に示したいのだ」と語った。

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同プログラムの運営は個人の寄付によって支えられており、初年度には100人強の退役軍人に無料で授業を提供した。2人はモヒラ・アカデミーの教員や現役の軍事顧問の助けを借りながら、その都度やり方を編み出しているという。とはいえ、2人は退役軍人が何を望み、何を必要としているかについて、確固たる信念を持っている。

サブルンは次のように説明する。「私たちはただ退役軍人を抱きしめるだけではない。私たちは退役軍人に適用される規則があることを明確に伝えており、軍人たちも規律を尊重している。参加者は慎重に選抜しており、ここにいる全員が同じ動機で動いている。ウクライナの未来に対する責任感だ」

2人の若き退役軍人の体験

ティムル・アブドゥリン(28)は10分遅れて教室に入ってきた。背が高く痩せ型で、黒髪を後ろで縛り、体中に入れ墨のある男性だ。会話に入り込むのにわずか数分しかかからない。笑顔でカリスマ性があり、生まれながらのリーダー格だ。アブドゥリンは授業中、機会があるごとに質問を投げかけ、講師からの問いにはすべて答える。戦争初期の軍隊でアブドゥリンがどれほど苦労したかは、後になって知ることとなった。

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アブドゥリンは修士号という学歴とIT企業での職務経験を持ちながらも、戦闘要員として受け入れてくれる部隊を見つけるのに苦戦した。ようやくその地位を得ると、アブドゥリンは小隊長に任命された。ところが、多くの者が自分よりはるかに年上で、異なる経歴を持つ20人余りの男性を統率するのは容易ではなかった。アブドゥリンは「当時25歳だった私は小隊の中で唯一、エクセルのスプレッドシートを読める人間だった」と回想する。

アブドゥリンは複数の部隊を転々としたが、どれも自身が望んでいたほどの戦闘には恵まれず、単なる暇つぶしの任務だと感じるようになり、次第にいら立ちを募らせていった。最後に配属された部隊では、指揮官が意図的に嫌がらせをしていると感じ、高齢の母親が病気になったのを機に除隊した。しかし、それから2年が経過した今、アブドゥリンは後悔に苛まれている。「軍隊ではあまり良い成績を残すことができなかった」と吐露し、毎日再入隊のことを考えていると打ち明けた。

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翻訳・編集=安藤清香

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