人種対立や貧困などの社会問題を数多く抱える中国の新疆ウイグル自治区。
いま、アメリカ帰りの投資家が起業を通じて「静かなる革命」を起こそうとしている。
(中略)彼は、新疆ウイグル自治区から起業家を輩出し、同地区で貧困に苦しむ1,300万人の少数民族の生活水準を高めたいと考えている。そこで、ベンチャー投資会社「アークアル・キャピタル」を経営する傍かたわら、地元の起業志望の若者を支援しているのだ。
(中略)
「私たちはまず、地域社会の問題をすぐに解決できる企業に投資しています。投資家から信頼を勝ち取った後で、より野心的なプロジェクトに投資したいと考えています」
そう語るヤクプは、英語教師や皿洗いをしながら留学資金を貯めたのち、04年にジョージ・メイソン大、そしてハーバード大へと転籍した苦労人だ。彼は大学で、天然資源に恵まれた地域ほど経済的に後退する傾向があるという、いわゆる「資源の呪い」について学ぶと、故郷を変えたいという気持ちに駆られるようになった。
そしていま、ヤクプは若い起業家たちに新しい道を示そうとしている。
「不動産や鉱山など、自分のものではないものを前提にビジネスを始めれば、政府次第で状況は変わり得ます。でも例えば、飲食店ならば、中国全土にチェーン展開できます。それも誰にも邪魔されることなく、ね」