ビジネス

2025.09.06 14:00

経営者はAIを活用し「自分の仕事をなくせる従業員」こそ評価すべき理由

Hiroshi Watanabe / Getty Images

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仕事の未来は、自らの仕事を自動化によってなくす勇気を持つ従業員のものになるかもしれない。これは、連続起業家でありAI企業1mind(ワンマインド)の創設者でもあるアマンダ・カーロウが掲げる、挑発的なビジョンだ。彼女は、企業は自らの役割を引き継ぐ能力のあるAIエージェントを構築した従業員に報いるべきだと考えている。ディストピア的な悪夢とは程遠く、彼女はこれを成長、効率化、そして人間のより大きな可能性への道筋と見なしている。

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「もし従業員が自分自身を完全に置き換えたらどうなるか、想像してみてください。ある従業員が自分の業務すべてを、自分よりもうまくこなすエージェントを構築して自己代替を達成したなら、私たちはその従業員の権利確定を前倒しで行います」と彼女は語った。「そうすれば、その従業員は別の仕事に取り組むことができ、最終的には1mindでの成功報酬を手にすることができるのです」。

これは、AIに対する従来の恐怖の物語を根底から覆すものだ。AIが仕事を奪うことを心配する代わりに、カーロウは人々に自らの代替を主導するインセンティブを与えることを提案する。その報酬とは、革新を起こし、新たな方向に成長し、そして会社の成功から利益を得る自由だ。

AIスーパーヒューマンの登場

そのビジョンは大胆だが、具体的な成果に裏打ちされている。1mindで、カーロウと彼女のチームは「営業戦略スーパーヒューマン」(go-to-market superhumans)と呼ぶ製品を創り出した。これらは、顔、声、そしてデジタルな営業頭脳を組み合わせた、感情的知性(EQ)を持つAIエージェントである。基本的なスクリプトしか扱えない従来のチャットボットとは異なり、これらのスーパーヒューマンは、見込み客の評価、製品の売り込み、複雑な技術的質問への回答、さらには契約締結まで行うことができる。

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「彼らは複数のチャネルで買い手と出会い、ウェブサイトに常駐して質問に答え、見込み客を評価できます」とカーロウは説明した。「人間のように見込み客を評価するチャットボットでありながら、売り込みを行い、本当に難しい技術的な質問にも答えるものだと考えてください」。

その結果は目覚ましい。1mindの初期顧客の1つである統合型CRM企業のハブスポットは、これらスーパーヒューマンの1体を導入した後、トライアルからの有料転換率が25%増加した。これは、人間の営業担当者を介さずに、より多くの見込み客が関心段階から収益につながる段階へと移行したことを意味する。

企業にとっての魅力は明らかだ。営業開発担当者や若手営業スタッフは、見込み客がアカウントエグゼクティブ(法人営業担当者)に引き継がれる前の「ゲートキーパー」として機能することが多い。その体験は一貫性がなく、顧客の視点から見れば不満を感じることもある。AIスーパーヒューマンはこれらのハードルを飛び越え、直接意味のある対話に進むことができる。カーロウが言うように、「私たちの目標は、より良い体験を創り出すことです。これらのスーパーヒューマンは買い手にとって指数関数的により良い体験を提供すると信じており、それができれば、皆が勝利します」。

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翻訳=酒匂寛

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