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2025.09.06 14:00

経営者はAIを活用し「自分の仕事をなくせる従業員」こそ評価すべき理由

Hiroshi Watanabe / Getty Images

人間に残されるもの

では、AIが販売、売り込み、交渉、そしてオンボーディングまでできるとしたら、人間には何が残されるのか。カーロウにとって、その答えは最も模倣が困難な資質にある。「共感の側面です」と彼女は説明した。「私はそれをスーパーヒューマンに組み込もうとしていますが、彼らは実際にはそれを持っていません。ただ模倣するだけです。彼らが、私たちが持つ共感や、私たちの心にある感情を持つことは決してないでしょう。人間は、より心を中心とした存在に戻ることができるのです」。

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この心と共感への焦点は、彼女自身の経験から直接来ている。かつて6sense(シックスセンス)を数十億ドル(数千億円)規模の企業に育て上げた後、カーロウは母親になるために一線を退いた。彼女は最初の子を養子に迎え、その後、長く困難な体外受精(IVF)プロセスを経て別の子を授かった。「母になったことで、私は10倍良くなりました」と彼女は語った。「ずっと効率的になりました。より良いリーダーになりました。チームに対する思いやりや、彼らが経験していることへの共感が深まりました」。

これは、テクノロジーがタスクを代替することはあっても、人間的なつながりの本質は依然として不可欠であることを思い出させる。むしろ、人々を反復的な役割から解放することは、彼らをより今この瞬間に集中させ、より共感的で、より創造的にするかもしれない。

異なる種類のリーダーシップ

カーロウはまた、自らの野心を隠さない。彼女は、企業を株式公開の鐘を鳴らすまで導く、数少ない女性創業者の1人になりたいと考えている。彼女の使命は、それが可能であることを示すことによって、女性や少女たちを力づけることだ。「心の底からそう信じています」と彼女は語った。「それが物事を現実化させる力です。前向きな感情と意図をもってそれを信じなければなりません。そうやって私たちはこの世界で物事を創造するのです」。

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物事を現実化させる力を信じるかどうかは別として、信念が重要であることは間違いない。テクノロジーがルールを書き換えている世界では、リーダーにはビジョンだけでなく、既成概念に挑戦する勇気も必要だ。従業員にAIで自分自身を代替するよう奨励することは不安に聞こえるかもしれないが、それこそが企業を未来に備えさせる、まさに根本的な思考なのだ。

仕事の未来を再考する

AIスーパーヒューマンはサイエンスフィクションではない。それらはすでにコンバージョン率を高め、技術的な質問に答え、契約を締結している。それらを受け入れる企業は、すぐに結果を出している。次のステップは文化的なものである。リーダーは、AIを活用してこれまで以上に仕事をうまくこなす従業員にどう報いるかを決めなければならない。たとえそれが、従業員自身を余剰人員にすることを意味するとしてもだ。

「これまでのルールが通用しない世界に生きるのは、楽しい」

AIを恐れる代わりに、組織は自己代替をいかにして成長への道筋に変えることができるか、という問いが浮かび上がる。もしインセンティブを正しく設定すれば、従業員は職を追われるのではなく、革新を起こし、新たな価値を創造するために解放されるだろう。

カーロウ自身は、「これまでのプレイブックやルールがもはや通用しない世界に生きるのは、なんて楽しいことでしょう」という。繁栄する企業とは、ルールを書き換えることを厭わない企業であろう。たとえそれが、自社の人々に自分たちを代替するAIを構築するよう求めることを意味するとしてもだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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