経済

2025.09.10 08:15

映画館の4割が赤字に。減収・赤字拡大が示す構造的課題

Getty Images

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映画館業界は、さまざまな努力の甲斐あって2011年から増収傾向にあり、新型コロナ禍で激しく落ち込んだ後も回復に向かっていた。ところが2024年は新型コロナ禍以来の減収に転じ、赤字の割合は44.8パーセントに拡大した。メガヒットコンテンツに依存せざるを得ない映画館業界の苦しい現状が見える。

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帝国データバンクの調べでは、2024年の国内映画館市場(事業者売上高ベース)は2775億円だった。前年度から増益した割合は34.5パーセントと減少し、減益は20.7パーセントと増えた。2019年は3000億円の大台に乗ったものの、翌年の新型コロナ禍で1783 億円にまで下落。そこから急速に回復して数年後には再び3000億円に達する勢いに見えたが、2024年でつまづいてしまった。

その原因は複数ある。深夜帯の営業が多いため人材確保が難しく、多くの映画館で給与の引き上げが行われた。電気代をはじめ、ポップコーンなどのフードサービスの仕入れ価格の高騰もある。運営コストの上昇にともない、鑑賞料金や飲食メニュー料金の値上げ、ゲームの設置などで対応したが、何より客足が減ったことが大きい。人々の節約志向やNetflixなどの動画配信サービスの利用拡大も影響しているようだ。

映画館はコンテンツがあってこそ。ハリウッドの脚本家や俳優のストライキの影響で、洋画の超大作が期待できないことは痛手だ。今年は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』や『国宝』といったメガヒット作品に救われて、2025年の映画館市場は微増の2800億円ほどと予想されている。

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だが「洋画大作やヒット作への依存、動画配信サービスの台頭により映画館へ足を運ぶ機会が減少傾向といった点に大きな変化はなく、構造的な課題は残ったままとなっている」と帝国データバンクは指摘する。やっぱり映画は映画館で観たい。もっと気軽に映画館に行ける工夫はないものか。


プレスリリース

文 = 金井哲夫

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