世界に向けて自国の見解や立場を効果的に発信する力が必要
吉川:フクシマさんは、日本の若者の海外留学減少を非常に懸念されていますね。
フクシマ:1997年にはアメリカに留学する日本人学生が4万7000人を超えて世界1位でしたが、現在は約1万1500人に減少し12位です。中国やインド、韓国、台湾、ベトナムは大きく増加しています。理由の一つは国内が快適すぎること、もう一つは費用の高さです。以前は海外留学経験がキャリアで評価されにくい、場合によっては不利になるという日本特有の事情がありましたが、最近は随分変化していると理解しています。
国際的な奨学金制度にも日本人の存在感は薄く、スタンフォード大学のナイト・ヘネシー・スカラーシップでは最初の10年間で日本人はわずか1人。このようなグローバル・ネットワークや知的コミュニティに日本がほとんど関われていない現状は、大きな損失だと米国の大学関係者は危惧しています。
日本には多くの強みがありますが、世界に向けて自国の見解や立場を効果的に発信する力を向上させる必要があります。
私が1980年代に米国通商代表部(USTR)にいた頃には、小林陽太郎氏(富士ゼロックス;現・富士フイルムビジネスイノベーション)、槙原 稔氏(三菱商事)、盛田昭夫氏(ソニー)など、英語を使いこなし、ビジネスだけでなく世界情勢についても発言できる日本人が多くいました。彼らは海外でも高く評価され、国際的な議論の場で存在感を示していました。
しかし近年、そのような人物は減り、内向き志向が強まっているように見えます。本来であれば経済や政治の分野で、日本はもっとリーダーシップを発揮できるはずです。米日関係を重視する立場からすると、日本がその潜在力を十分に活かしていないのはもったいないことです。
吉川:なぜ当時のリーダーは国際的な発言力をもっていたのでしょうか。
フクシマ:過去の日本のリーダーたちは、戦後の経済成長期に「追いつき、追い越せ」という強い意欲と「将来ビジョン」をもっていました。今後、アメリカが内向き傾向を強め、中国も課題を抱える今こそ、日本がグローバルな舞台で「未来のビジョン」を提案し、積極的な役割を果たすことは、自国の利益にもつながるはずです。
Forbes JAPANの読者には「国際舞台で積極的に役割を果たせるリーダーを育て、支援してほしい」というメッセージを伝えたいです。これは単に語学力の問題ではなく、国際的な課題や将来ビジョンを明確に論理的に語れる能力が重要です。ビジネスだけでなく、政治、政府、学術、メディアなど幅広い分野で、そのような人物が必要とされています。
新しい激変する環境の中で、日本はもっと国際的に発言力をもつべきであり、そのためには若い世代が意識をもち、海外経験やグローバル・ネットワークを積極的に築くことが不可欠です。


