ビジネス

2025.09.03 16:45

米国で変化する政府とビジネスの力学 — シリコンバレー台頭と日本が学ぶべき新秩序

米政府機関やグローバル企業の要職で活躍したグレン・S・フクシマ氏(右)と、著者(左) Courtesy of the author

吉川:確かに、日本ではトランプ政権の独自路線であるとメディアから伝えられる傾向があり、その裏でより大きなパラダイムシフトが起きていることを認識している人は限られている印象です。長年のイメージから脱却できない日本の人は多いですし、これが一時的なものと思っている人も多そうです。

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フクシマ:もう一つの違いは、人材の行き来です。アメリカでは官民を行き来する「リボルビングドア」が一般的で、高官クラスにも民間出身者が多くいます。一方、日本では最近までは、官僚は定年まで役所に勤め、民間から政府への人材流入はごく稀でした。民間出身者が多すぎれば規制が企業寄りに、少なすぎれば効果的な政策が作りにくい。バランスが重要ですが、アメリカでは政権によって極端に振れます。

吉川:日本では政府から民間にいく人は増えていますが、その逆はまだ少ないですし、一方通行であることが多いですね。一方で、日本は政治・ビジネス・テクノロジーがすべて東京に一極集中していることで、官庁と民間の間のやりとりは緊密である印象です。

フクシマ:そうですね、AIのように政治・ビジネス・テクノロジーが密に連携する必要がある場面においては、そういう意味では日本は有利です。アメリカでは、ワシントンD.C.がシリコンバレーから離れすぎているがために、テクノロジーを理解しない政治家や政府担当者が多いのが大きなリスクになっています。

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吉川:連邦と州のパワーバランスにも変化はありますか。

フクシマ:共和党は連邦政府の権限縮小と州の権限強化を支持する方針をとっています。憲法解釈において、保守派は「国防以外の多くの権限は州にあるべき」と考えていることが背景にあります。2022年に連邦最高裁が中絶権を違憲であるとの判断し、州の権限としたことはその流れからです。また、教育分野では1979年に創設された連邦教育省をトランプは廃止し、教育を州政府に委ねようとしています。このような連邦政府と州政府の間のパワーバランスの変化にも今後さらに注視していく必要があります。

米国社会の特徴の一つとして「官民間の人的流動性」を挙げるグレン・S・フクシマ氏(右) Courtesy of the author
米国社会の特徴の一つとして「官民間の人的流動性」を挙げるグレン・S・フクシマ氏(右) Courtesy of the author

政治への影響力を高めるシリコンバレー

フクシマ:日本のリーダー層はアメリカを見る際、依然として東海岸に目を向けがちです。しかし現代の米国は多様化し、特に、シリコンバレーは経済・技術だけでなく政治面でも重要性を増しています。イーロン・マスクやピーター・ティールのように、巨額の資金力や政府への関与を通じてアメリカの未来に影響を与えるテクノロジー関係者が増えています。

数年前、日本の大手メディア企業の会長がアメリカを訪れた際、その企業の駐在員の9割以上が東海岸に配置されていると聞きました。政治ニュースはすべてワシントンDC、ビジネスはすべてニューヨークに集まるという認識によるものでした。以前ならその認識で正しかったでしょう。しかし、今後は、今のアメリカは当時よりも多様化していることを認識している日本人のリーダーが増えることを期待しています。シリコンバレーの影響力が高まっている中、産業によって異なりますが、この地に人材を配置していない日本の政府も企業も今後リスクを抱える可能性があります。

吉川:シリコンバレーとワシントンD.C.の関係性をどう見ていますか?

フクシマ:ワシントンD.C.とシリコンバレーの物理的距離は、政策決定者がテクノロジーを十分理解することを難しくしています。インターネットやAIの時代には、教育、働き方、健康、戦争の方法に至るまで、あらゆるものが影響を受けます。しかし、物理的距離に加えて、官民の人材流動性が欠如している政権では連邦議会や政府内でテクノロジーを深く理解している人は残念ながら多くありません。理想的には、国内ではイノベーションを促進しつつ社会的リスクを最小化する規制が必要ですが、対外的には中国のように政府が強く関与する競合国との競争も考慮しなければならず、簡単ではありません。

「国際舞台で積極的に役割を果たせるリーダーを育て、支援してほしい」(フクシマ氏) Courtesy of the author
「国際舞台で積極的に役割を果たせるリーダーを育て、支援してほしい」(フクシマ氏) Courtesy of the author
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文 = 吉川絵美

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