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2025.09.05 14:15

クラゲならヨシダと世界が認知。日本人クラゲ1万匹養殖家、武器は「高参入障壁」

香港在住の日本人起業家・吉田俊広氏

香港在住の日本人起業家・吉田俊広氏

以下、香港在住のインタビューライター、堀江知子氏による寄稿である。

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水中の世界に心を奪われた幼少期

ふわふわと漂う姿に、どこか心がほぐれる……。

忙しい日常のなかで、クラゲは多くの人にとって癒しの存在になっている。現在開催中の大阪・関西万博でも、クラゲをテーマにした「クラゲ館」が話題に。全国の水族館でも、相変わらずクラゲの展示は人気だ。

クラゲの飼育はとても繊細で、水質やエサの管理には高度な技術が求められる。そういった理由から、クラゲをビジネスとして成立させている企業は、世界でもほんの数社しかない。

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この珍しい分野で、年商1億円を超えるビジネスを築いたのが、香港在住の日本人起業家・吉田俊広氏だ。

香港在住の日本人起業家・吉田俊広氏
香港在住の日本人起業家・吉田俊広氏

香港の雑居ビルの一室。吉田氏を訪ねた事務所に広がるのは、約1万匹のクラゲがゆらめく養殖施設だ。ここから、世界中の水族館にクラゲが届けられている。

国際都市・香港を拠点に、クラゲの繁殖と輸出という前例の少ない分野に挑んできた吉田氏。その原動力は、ただただ好きなことをしていたいというシンプルな思いだ。クラゲに魅了され、夢中で関わり続けてきた結果、その活動がビジネスへとつながっていった。

農業高校の教師を父親に持ち、北海道・十勝の大自然で育った吉田氏。生き物への興味は自然と育まれて、将来の夢は「生物の研究者」だった。

なかでも心を奪われたのが水中の世界。大学では生物工学科を専攻し、迷うことなく海洋生物の研究に進んだ。修士課程では名古屋港水族館での1年間の研修を経て、研究者になるという夢とともに海外へ渡った。

進学先は、南極にも近いオーストラリアのタスマニア大学。ここで、南極生態系の鍵種である動物プランクトンのナンキョクオキアミの生態と分布を調べる南極調査航海に参加。航海後も実験室での研究を進め、海洋生物学の博士号を取得。ここでの知識と経験は、後にクラゲビジネスを立ち上げる土台となっていく。

タスマニア大学時代
タスマニア大学時代
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取材・構成=堀江知子 編集=石井節子

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