宇宙

2025.09.01 10:30

宇宙論的「リチウム問題」、解決には標準理論超える新物理学が必要か?

欧州宇宙機関(ESA)のユークリッド宇宙望遠鏡が撮影した球状星団NGC 6397。さいだん座の方向約7800光年の距離にある、宇宙初期に形成された非常に古い球状星団で、金属(重元素)量が著しく少ない(ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)

リチウム問題は、2011年のレビュー論文で適切に説明されている。

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学術誌Annual Reviews of Nuclear and Particle Scienceに掲載されたこの論文で、執筆者のブライアン・フィールズは、BBNが宇宙を調べる手段として最も古く信頼性の高いものだと指摘している。だが、リチウム7の観測値は、理論予測値の少なくとも3分の1だと、フィールズは記している。

フィールズの論文が発表されて以来のこの14年間で、リチウム7の不一致の解決に向けた進歩は漸進的にとどまっている。

太陽ニュートリノの高精度の観測もまた、新しい物理学の方向を示している。

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コーンによると、原子核反応ネットワークを太陽に適用すると、核融合反応で生成されるニュートリノの個数を予測できるが、電子ニュートリノの数が予測値を下回ることが判明している。電子ニュートリノは地球に到達するまでの間に、ニュートリノ振動と呼ばれるプロセスを通じて別の種類のニュートリノに変化するという。

BBNからもまた、初期宇宙に3種類のニュートリノが存在していたことがわかる。BBNの予測値と観測値の不一致により、原理的には、新しい物理学に関する手がかりが得られるかもしれない。

だが、この問題の大部分は、従来の恒星物理学によってあっさりと解決される可能性があると、コーンは指摘している。

BBNの場合、リチウムは微量元素にすぎない。太陽の場合、リチウムが攪拌によって250万度を上回る温度の下部層に達して壊れてしまうため、リチウムの99.5%が失われる。

古い星をたどる

コーンによると、天の川銀河(銀河系)を取り巻くハロー領域に分布する恒星は非常に古い金属欠乏星で、ハロー星を調べることで100億~120億年前の宇宙の状態をたどれる可能性がある。

恒星内部の攪拌

だが問題となっているのは、観測対象の恒星の内部深くまで攪拌によって到達するリチウムや他の元素の量がどれくらいかを突き止めるのに天文学者が苦労していることだ。特に、恒星の外側の対流層と恒星内部との境界で、リチウムの攪拌がどのくらい起きているかを、理論天文学者は知る必要がある。

熱いスープの鍋の中と同様に、対流層の底部にまで運ばれた恒星物質は250万度の温度に達して破壊されると、コーンは説明した。

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翻訳=河原稔

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