──では、美意識を磨くために何から始めたらよいでしょうか?
高根:まずは美術館やギャラリーに行ってアートを見ること。それがすべての出発点です。
永田:美醜は究極的に主観的なものだと思います。全てのカップルが愛の眼鏡を通すことで、相手のパートナーが世界で一番美しいと思えていれば世界は平和で、そうした愛情をもってアートを見ることができれば、それは美意識の一つの形だと思います。作品に愛を持って向き合うことが美意識を育てるのです。
大林:よく「どのように作品を選ぶのか」と聞かれますが、大事なのはその作品に愛があるかどうかです。価格や話題性で選ぶのではなく、愛がなければコレクションはできません。
一方で、美意識を育てるには良いものを多く見ることが欠かせません。美味しいものを食べなければ味が分からないのと同じです。世界で評価される美術館や展覧会で体験を重ねること。そしてTokyo Gendaiのような素晴らしいギャラリーが集まるアートフェアに足を運ぶことも、美意識を磨く近道だと思います。

大林剛郎◎大林組取締役会長。日本を代表する建設会社の経営を担う一方、世界的なアートコレクターとしても知られる。美術館活動や文化支援にも積極的に関わり、経営と文化を横断する独自の視座から、アートを通じた社会的価値創造を推進している。
永田暁彦◎UntroD Capital Japan代表取締役社長。ユーグレナの取締役として同社を東証一部上場に導き2023年に取締役CEOを退任、現在は次世代サイエンティストに投資するアジア最大規模のファンドを運営。アート的視座を経営や投資戦略に取り入れる独自の手法で注目を集める。
高根枝里◎Tokyo Gendaiフェアディレクター。ハンター大学で心理学とアート、ニューヨーク大学大学院でアートマネジメントを学び、国際交流基金NYオフィス、Google Arts & Culture日本担当などを経て2016年に帰国。グローバルな視点で日本のアートフェアを国際的な水準に引き上げる役割を担う。


