アジア

2025.08.30 09:00

FRBの独立性損なえばトランプの最悪の経済失策に 「特権」の要、破壊なら深刻な代償

Shutterstock.com

Shutterstock.com

世界の金融関係者の間で、連邦準備制度理事会(FRB)は最も敬意を払われている米国の機関だ。アジアでは、投資家は往々にして自国の中央銀行よりもワシントンのFRBの動向に注目している。

advertisement

それなのに、ドナルド・トランプ米大統領はどうしてまた、米国の金融影響力のまさに中心にあるこの機関に火をつけるような真似をしているのか、理解に苦しむ。トランプはFRBのジェローム・パウエル議長の更迭を画策してきたほか、現在はリサ・クック理事の解任も試みている。

トランプのチームは、12の地区連銀に対して影響力を行使する方策も模索しているようだ。おそらく、トランプがその総裁を選任できるようにする仕組みなどを検討しているのだろう。各地区連銀の総裁の指名や再任は現状では、地元の民間出身者を含む地区連銀理事会が大きな発言権を持っている。

設立から112年たつFRBの現行のシステムが申し分ないなどとは誰も思っていない。FRBは雇用の最大化と物価の安定という「デュアルマンデート(2つの使命)」を負っているが、失敗は必ず起こるものだ。一例を挙げれば、1994年にFRBが12カ月にわたって積極的な金融引き締めを行った時には、世界中にショックを引き起こした。

advertisement

当時のアラン・グリーンスパン議長率いるFRBが1年で2倍という急速な利上げを進めたあおりで、メキシコは危機に陥り、カリフォルニア州のオレンジ郡は財政破綻し、ウォール街の債券投資の巨人だったキダー・ピーボディは閉鎖の憂き目に遭った。また、ドル高が数年続くことになり、これは1997年のアジア通貨危機につながった。

もしトランプが、ワシントンの享受している「法外な特権」の意味、そして米国がそれを維持したい理由について理解していないのであれば、スコット・ベッセント財務長官が彼に教えることができるだろう。ヘッジファンド出身のベッセントは、1960年代にフランスのバレリー・ジスカールデスタン財務相(のちの大統領)がどういう状況を指してこの言葉を使ったか、よく知っているはずだ。

米国は最大の経済大国にして基軸通貨国であるため、政府はほかのどの国にもできないような「放漫」な財政運営ができる。米政府は、本来よりも低い金利で借り入れができる。また、世界のどこかで何か問題が起これば、「安全資産」としてドルが買われることになる。

次ページ > 「FRBプット」が常態化すればモラルハザードやインフレ高進のリスクに

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事