北米

2025.08.30 08:00

イーロン・マスクの悪夢か トランプ政権が狙う「スペースX」株式取得

イーロン・マスクとトランプ米大統領 2025年5月(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

イーロン・マスクとトランプ米大統領 2025年5月(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

トランプ政権は、防衛企業への巨額支出の見返りとして株式を取得する動きを見せている。インテルからは補助金と引き換えに10%の持分を確保したが、矛先がスペースXのような健全な企業に向かう可能性が懸念される。もし政府が同様の取引を迫れば、経営の自由を大きく制約しかねない。一方、創業者イーロン・マスクは議決権株を過半数握っており、政府の介入を拒むだけの影響力を持つ。こうした株式取得の拡大は、利益相反や投資萎縮といった深刻な副作用をもたらす恐れがある。

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米国政府の防衛企業への持分取得検討

米国政府は国防関連企業に毎年数千億ドル(数十兆円)を支出している。トランプ政権は、その見返りに物やサービスだけでなく株式も求めるべきだとみている。政権の狙いは、それら企業の株式を手に入れることだ。

商務長官のハワード・ラトニックは8月26日、国防総省が国防請負企業の株式の取得を検討しているとCNBCのインタビューで語った。

彼は、これら国防企業による弾薬の購入費用は見直しが必要であり、「これまでのやり方は、実質的に企業への一方的な譲渡だった」と語った。また、この見直しに国防長官ピート・ヘグセスと国防次官スティーブン・ファインバーグが「取り組んでいる」とした。

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彼の発言は、米政府によるインテル株取得の議論の最中に出たもので、防衛分野の観測筋を驚かせた。しかし、防衛大手は政府の要求を退ける可能性が高い。中でも急成長するスペースXの場合、政府関与を拒む要因がより強い。政府が株主として経営に関与し、内部から事業を監視するような事態を、創業者イーロン・マスクが受け入れるはずがない。そしてマスクには、それを拒むだけの交渉力がある。

スペースXを含む大手防衛企業の強固な財務基盤

経営難に陥った半導体メーカーのインテルやレアアース鉱山開発企業のMPマテリアルズが、資金調達のため政府に株式を譲渡したのとは異なり、スペースXを含む防衛請負大手は、健全な財務基盤を維持している。その中には、昨年の増資などによるエクイティ調達で240億ドル(約3.5兆円。1ドル=146円換算)を確保し、商用機の生産改善や問題を抱えた防衛プログラムの立て直しで大きな進展を示したボーイングも含まれている。

トランプ政権の権限と国防生産法をめぐる限界

「仮にトランプがスペースXやロッキード・マーチンのような企業に狙いを定めたとしても、財務状況が健全な防衛大手の株式を取得する法的権限を彼らが持っているのかどうかは不明だ」と、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の防衛アナリスト、トッド・ハリソンは指摘した。

6月、トランプとかつて蜜月関係にあったマスクとの関係が劇的に崩壊した際、トランプの元顧問スティーブ・バノンは、大統領が国防生産法に基づいてスペースXを接収すべきだと主張した。もし1951年であれば可能だったかもしれない。しかし1952年、トルーマン大統領が同法を用いて製鉄所を国有化しようとした試みを最高裁が違憲と判断し、議会はこの権限を2009年に正式に撤廃した。

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編集=上田裕資

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