スペースXの支配構造と外部介入への拒否
米国政府は、世界最大の打ち上げ事業者で低軌道衛星の製造企業でもあるスペースXとの間に、約130億ドル(約1.9兆円)規模の未履行の契約を抱えている。しかし同社に代わる契約先は乏しく、政府の交渉力は限られる。
「スペースXの議決権株式の過半数を確実に握るマスクが政府に株式を渡す可能性は低い」と、コンサルティング会社クイルティ・スペースで政府渉外ディレクターを務めるキンバリー・シヴァーセン・バークは述べた。マスクは、資金を必要としていない上に外部からの監視を望んでおらず、同じ理由でスペースXを上場させていないと彼女は指摘した。
「外部の株主が入り込んだ瞬間に、会社の内部が覗かれることになり、状況は一変する。ましてやアンクル・サム(米政府)ならなおさらだ。透明性をめぐる議論や新たな取締役の選任、米政府説明責任局(GAO)の監査は、マスクにとって悪夢だ」とシヴァーセン・バークは語った。
ホワイトハウスの戦略拡大と投資環境への悪影響
国防総省はコメントを控えた。ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は、インテル株の取得を受けて、「政権は今後も、国民の税金を投じて行う投資から納税者が利益を享受できるような、他の取引を模索し続ける」と記した。
米政府は、過去のいくつかの経済危機の際に、経営難に陥った企業の株式や新株予約権(ワラント)を取得しており、2009年の金融危機では銀行やゼネラル・モーターズを、パンデミック時には航空会社を救済した。しかしトランプ政権は、米企業の活動が生み出す利益に対し、前例のない規模での還元を求めている。
トランプ政権は、USスチールに対して日本製鉄との合併を承認した見返りに「黄金株」を取得。エヌビディアとAMDの中国での半導体売上高の15%を政府の取り分とする取引をまとめた。22日には、CHIPS法でバイデン政権時代に拠出が決まっていた57億ドル(約8322億円)の補助金と、別のプログラムからの32億ドル(約4672億円)を支払う代わりに、インテルの株式10%を確保した。
ホワイトハウスの経済顧問ケビン・ハセットは、この動きをトランプが設立を目指す政府系ファンドに向けた布石だと表現した。
一方、ジェフリーズのアナリストのシェイラ・カヒャオグルは、「もし大手防衛請負企業が政治的圧力に屈すれば、株式投資は深刻な利益相反を招きかねない」と指摘した。「政府が株式を保有する企業に契約を与え、株を持たない企業を差し置いた場合に、最初の抗議がどんなものになるかは想像に難くない」と彼女は記している。
「こうした動きは、企業の米政府との取引意欲や、そうした企業に投資する投資家の意欲を冷え込ませる可能性がある。これは、国防総省が最近進めている『政府との契約を競う企業の裾野を広げる試み』に逆行しかねない」と、アメリカン・エンタープライズ研究所のハリソンは指摘した。「もし政府が市場に介入し、不公平な競争環境を作っているという認識が広まれば、防衛系スタートアップへのベンチャーキャピタルからの投資は干上がりかねない」と彼は指摘した。


