アップル株の10年間
過去10年間、アップル株はS&P500のリターンを大きく上回った。アップル株の価格上昇は、2015年以降の新製品と新サービスの投入により支えられた。加えて、配当や自社株買いもトータルリターンを押し上げている。
さらに、正確に数値化するのは難しいものの、アップル株がバークシャー・ハサウェイの最大保有銘柄であることも追い風となった可能性がある(最近、同社は保有株の一部を売却している)。
2015年以降におけるアップルの株価成長
2015年8月21日から2025年8月22日の間に、アップルの株価は714%上昇した。これは同期間におけるS&P500の上昇率である236%を大きく上回る。
過去10年間におけるアップルの主なマイルストーン
2015年以降、アップルは重要なマイルストーンを達成してきた。CNETによれば、Apple Watchの進化と成功、Apple TV+、Apple News+、Apple Arcadeなどのサービスの拡大、そして時価総額の記録更新などがそれにあたる。さらにiPhone XやiPhone XRといった大型プロダクトのリリースや、他製品のデザイン刷新などもあった。
・Apple Watchの成長と進化:2015年に発売されたApple Watchはウェアラブル市場で支配的存在となった。GPS内蔵、セルラー接続といった機能だけでなく、心電図(ECG)、転倒検知、血中酸素・体温センサーなどの健康機能も追加された。
・サービスの拡大:Apple TV+、Apple News+、Apple Arcadeなどのサブスクリプション型サービスを追加した。
・時価総額の記録更新:アップルは2018年に米国企業として初めて時価総額1兆ドル(約147兆円)を突破し、その後2兆ドル(約294兆円)、3兆ドル(約441兆円)も達成した。
・iPhoneの進化:iPhone XはベゼルレスのディスプレイとFace IDを導入した。その廉価版のiPhone XRは消費者に人気を博した。
・AI統合:同社製品とAIとの統合においては競合より遅れを取っている。
・ハードウェアのデザイン刷新:MacBook AirにはTouch ID、Retinaディスプレイ、新しいカラーバリエーションが追加され、デザインが刷新された。
株式分割が投資家のリターンに与えた影響
アップルはこれまでに5回の株式分割を行っており、直近は2020年8月31日に実施された。Pocket Optionのデータによれば、その際、1株499.23ドルで取引されていた株式は4株に分割され、1株124.81ドルとなった。直近の株式分割の2週間前には、株価上昇を期待した投資家により株価は約8%上昇した。Google Financeによれば、2000年8月の株式分割以降、アップル株は83%上昇している。
配当が与えたトータルリターンへの影響
Macrotrendsによれば、アップルの配当支払い総額は2015年の115億ドル(約1兆6900億円)から2024年には152億ドル(約2兆2300億円)へと年率2.8%のペースで増加した。DRIPCalcによれば、2025年8月14日までの10年間、受け取った配当をアップルに再投資していた場合のトータルリターンは883%となり、再投資なしの場合の815%から68ポイント増加した。
さらにBenzingaによれば、アップルは過去10年間で約7040億ドル(約103兆円)を自社株買いに投じており、これは年間約700億ドル(約10兆2900億円)に相当する。
S&P500の10年間
S&P500は過去10年間で2桁成長を遂げた。ハイテクや金融株が指数を押し上げた一方、食品・飲料およびタバコ、不動産といったセクターは大きく下げた。採用銘柄が支払う配当はS&P500のトータルリターンにも大きく寄与した。
2015年以降におけるS&P500の成績
OfDollarsandDataによれば、2015年7月から2025年7月までの10年間でS&P500のリターンは200.6%となった。
過去10年間におけるS&P500のセクター別成績
GoogleFinanceのデータによると、過去10年間でS&P500を牽引したのは、テクノロジー、金融サービス、化学、保険、公益事業セクターだった。一方で、食品・飲料およびタバコ、不動産、輸送、エネルギー、小売セクターは低迷した。
上位5セクターのリターンは以下の通り。
・テクノロジー流通:215.87%
・金融サービス:165.60%
・化学:96.94%
・保険:82.34%
・公益事業:71.27%
下位5セクターのリターンは以下の通り。
・食品、飲料およびタバコ:マイナス99.60%
・不動産:マイナス88.93%
・輸送:マイナス73.01%
・エネルギー:マイナス61.74%
・小売:マイナス25.52%
配当再投資の影響
S&P500においても、配当の再投資によるインパクトは大きい。OfDollarsandDataによれば、S&P500で配当を再投資するとリターンは約56ポイント増加し、トータルリターンは256.9%となった。
アップルとS&P500の比較
配当を再投資した場合のリターンでみても、アップルのリターンはS&P500のそれを上回っている。DividendStocksによれば、アップルの配当再投資後の平均年率リターンは24.4%で、S&P500の13.3%(officialdata.orgのデータ)を大きく上回った。
ただしアップルはボラティリティが高い。ボラティリティのデータは、2015年8月21日から2025年8月22日までの日次対数リターンを基に計算される。年率換算ボラティリティは、それぞれのリターンが平均値からどの程度ばらついているかを示す指標である日次リターンの標準偏差を年率換算したものである。
GoogleFinanceのデータによれば、アップル株の年率換算ボラティリティは31.62%であり、S&P500の15.4%の約2倍となった。
10年前に1万ドル投資していたら?
S&P500と比較して、アップルは10年前に1万ドルを投資した場合のリターンで大きく上回った。配当を再投資する仮定でアップル株に10年間投資した場合、10年前の1万ドル(約147万円)は、今日では10万1430ドル(約1491万円)になったことになる。これはS&P500に10年間投資した場合の3万5688ドル(約525万円)より184%高い。
アップル株に1万ドル投資した場合
2015年8月21日にアップル株に1万ドル(約147万円)を投資し、その後に受け取った配当金を再投資しなかった場合、2025年8月22日時点で投資額はおよそ8万5893ドル(約1263万円)になっている。これに対し、同じ期間に受け取った配当金を再投資していた場合には、投資額はおよそ8万9144ドル(約1310万円)に成長していたことになる。
S&P500に1万ドル投資した場合
2015年8月21日にS&P500に1万ドル(約147万円)を投資していた場合、2025年8月22日時点でその投資額は3万2492ドル(約478万円)になっていたことになる。さらに、その期間中に受け取った配当金を再投資していた場合、当初の投資額は3万7284ドル(約548万円)になっていたことになる。
長期投資家への教訓
配当を支払う複数の銘柄で構成されたポートフォリオを長期的に保有し、配当を継続的に再投資することは、長期的な資産形成を最大化する強力な戦略となる。
なぜか? 配当の再投資は、元本と再投資された配当の双方にリターンがつくことで、時間とともに投資が複利的に成長するからである。過去10年間で配当はS&P500のトータルリターンの23%を占めており、これは配当がリターンに与える影響の大きさを示している。
証券会社で自動的に配当を再投資する設定をすれば、時間を分散して株を購入する「ドルコスト平均法」の力を活用でき、リスクの軽減にもつながる。
まとめ
市場のタイミングを狙うよりも、長期投資は有効な戦略となり得る。特に分散されたポートフォリオを持ち、配当を再投資する場合にそれが当てはまる。アップル株のリターンは過去10年間でS&P500のそれを大幅に上回った。しかし、バークシャー・ハサウェイが保有するアップル株を売却し始めている今、過去の実績が将来を保証するものではないことを忘れてはならない。


