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2025.09.03 13:30

次世代カーボン素材、社会実装の本格化へ

豊永将基|千島土地(写真左)鄧 飛|カーボンフライ(同右)

豊永将基|千島土地(写真左)鄧 飛|カーボンフライ(同右)

鄧飛(テン・フィ)は2022年、カーボンナノチューブ(CNT)の社会実装を目指して、東京でカーボンフライを創業した。CNTは、炭素だけでつくられた筒状のナノ素材。軽量で高強度、熱や電気の伝導率が高いという特徴をもち、次世代の素材として注目されている。カーボンフライは、CNT業界の積年の課題だった大量生産の技術開発に成功。パウダーや繊維、フィルムへの成形が可能で、リチウムイオン電池用の導電性ペーストをはじめ、航空宇宙、モビリティ、エネルギーなどの分野で基礎素材としての応用を進めている。

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同社が約19億円の資金調達を実施した24年9月のラウンドに、千島土地の豊永将基は投資担当として参画した。その理由とは。


豊永:千島土地は、江戸時代に貿易業で富を築き、不動産に事業をシフトした芝川一族の所有地を管理するために1912年に設立された会社。所有地の賃貸業と航空機のリース業を二本柱としていましたが、2022年にスタートアップ投資を始めました。5年や10年での満期がなく、中長期で起業家に寄り添った支援ができること、投資委員会のようなフローがなく、スムーズに意思決定できることが特長です。

鄧:私は国内のほとんどのVCにアクセスしてきましたが、千島土地は圧倒的に決断が早かったですね。一度お会いしてすぐに決めていただきましたから、ご縁だと思いました。

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豊永:カーボンフライの存在を最初に聞いたときは、炭素繊維が市場のスタンダードになっているなかで、「夢の素材」といわれ続けてきたCNTに本当に置き換えていけるのか半信半疑でした。とはいえ、ディープテックは投資対象として相性が良い領域。それで一度、鄧さんに直接お会いしてみようと。話を聞いての結論は「投資したい」でしたね。

鄧:私はCNT領域でこれまでに3回、起業をしています。1度目では経営を学び、2度目では技術の基礎を固めた。3度目となるカーボンフライは、いよいよマーケットインへの挑戦です。我々は、すでに一本一本のCNTを均一の品質で生産する技術の開発に成功しています。

豊永:この品質というのがすごく重要で、均一じゃないと、樹脂に入れたときにきれいに混ざらないんです。そうすると、結局その素材は強度が出ないし、使いものにならない。CNTをラボレベルでつくっている会社はたくさんあるけれども、市場に投入できるレベルでつくれるのはカーボンフライしかないと思っています。そして鄧さんは、それをいかに早く社会実装するかを最重要視して計画を立てていた。優秀な技術者であり、マーケットの感覚にも優れていたんです。この人ならやってくれそうだと思いました。

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文 =眞鍋 武 写真=平岩 享

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