マヤ文明の遺跡のひとつで世界遺産に登録されている「コパン遺跡」の地下神殿には、保存のために一般の立ち入りが禁止されている区域がある。数年前からその3Dマップの制作が行われ、大阪・関西万博のホンジュラス展示ブースでも空間再現ディスプレイによる展示が行われているが、このほど、そのデータを使った高精細なVRツアーが開発された。それを実現させたのは、19億点もの点群データをリアルタイムで描画するための高度な圧縮技術だ。
3D空間データや技術から新しい体験を生み出すテクノロジー集団ホロラボは、ホンジュラス国立人類学歴史学研究所、国際協力機構、そしてマヤ文明研究の世界的拠点であり、コパン遺跡研究の第一人者である中村誠一特別招聘教授がセンター長を務める公立小松大学次世代考古学研究センターの協力により、コパン遺跡の立ち入り禁止区域の探索が楽しめるVRツアーを開発した。
これまでのコパン遺跡の調査で、TOPPANの撮影による地下神殿と調査用トンネルを含む非公開区域の高密度な点群データが作られているが、これをホロラボは「遺跡の姿を忠実にデジタル空間に再現」した。点群データとは、無数の点の三次元座標を記録したもの。いわば立体の点描写だ。19億点にものぼる膨大な点群データを高精細な3D映像にリアルタイムで変換するには、通常なら相当のコンピューターパワーが必要となる。
そこでホロラボは、高速点群表示システム「Dawn」を開発。データサイズを最大95パーセントまで圧縮できる特許出願中の技術で、通常のPCやスマートフォンでストレスなくVR映像を表示できる。
現在は、ホンジュラスのコパン遺跡博物館の常設展示として公開されている。音声解説は、スペイン語、英語、日本語に対応している。文化遺産の新たな鑑賞や学習の方法として、また現地の観光を振興するコンテンツとしての活用が期待されるということだ。



