宇宙

2025.08.24 10:30

時価総額1兆円超の米ファイアフライ社、北海道からのロケット打ち上げ計画で合意

(c)Firefly Aerospace / Trevor Mahlmann

さらに北海道スペースポートの場合は北緯42度に位置するため、軌道傾斜角の大きな軌道に少ないエネルギーで衛星を投入でき、その結果、打ち上げられた衛星は広範囲な地表を観測できる。緯度が低い射場からでも軌道傾斜角を大きくとれるが、米国のケープカナベラル(北緯28度)や種子島(北緯30度)の場合は、打ち上げ後に軌道変更(ドッグレッグ・マヌーバ)が必要となり、それには推進剤の追加搭載、またはペイロードの低減が必要となる。

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2026年9月以降に新射場が完成

北海道スペースポートでは現在、「Launch Complex-0」(以下、「LC-0」)と呼ばれる射場を運用している。LC-0はインターステラテクノロジズ社(以下、インターステラ社)専用の射場であり、準軌道ロケットが打ち上げられている。準軌道とは、高度100km以上とされる宇宙には到達するが、地球周回軌道には乗らず、そのまま落下する軌道のこと。2019年には同社の観測ロケット「MOMO3号機」が打ち上げられ、国内民間企業が独自に開発したロケットとしては初めて宇宙空間に到達した。

北海道スペースポートのLaunch Complex-1の完成予想図(c)HOSPO/Space Cotan
北海道スペースポートのLaunch Complex-1の完成予想図(c)HOSPO/Space Cotan

また、LC-0に隣接して、「Launch Complex-1」(以下、「LC-1」)の建設も進んでいる。インターステラ社では現在、人工衛星を地球周回軌道に投入するためのロケット「ZERO」を開発しているが、LC-1は同機に対応した発射場であり、ロケット組立棟(VAB)や試験設備などが併設される。ZEROにとってこのLC-1が母港となるため、その初打ち上げはLC-1が完成する2026年9月以降が見込まれる。今年6月には大樹町が、インターステラ社をLC-1の優先事業者として選定した。

北海道スペースポートの未来予想図(c)HOSPO/Space Cotan
北海道スペースポートの未来予想図(c)HOSPO/Space Cotan

さらに、「Launch Complex-2」(以下、「LC-2」)の建設も検討されている。LC-2には複数のVAB(組立棟)が完備され、複数企業のロケットを並行して組み立てることが想定されている。ファイアフライ社のALPHAが実際に打ち上がることになれば、このLC-2を使用する可能性が高い。そのため北海道からALPHAが打ち上がるとすれば、それはZEROの初フライトの数年後になるだろう。

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編集=安井克至

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