宇宙

2025.08.24 10:30

時価総額1兆円超の米ファイアフライ社、北海道からのロケット打ち上げ計画で合意

(c)Firefly Aerospace / Trevor Mahlmann

また、同社は8月7日、ナスダック・グローバル・マーケット(中規模企業向け市場)への上場を果たした。新規株式公開(IPO)の価格(45ドル)を34%上回る60.35ドルで初日取引を終え、8億6800万ドル(約1293億円)を調達。これによってファイアフライ社の時価総額は、この執筆時(8月22日)には67億8100万ドル(1兆103億7000万円)に達している。

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ただし、ロケット事業に関しては苦戦を強いられている。ファイアフライ社は小型ロケット「ALPHA」をこれまでに6回打ち上げているが、うち1回は打ち上げ直後に墜落、3回は予定軌道にペイロードを投入できず失敗に終わっている。

なぜ北海道なのか?

スペースXとロケットラボがロケット事業における圧倒的なシェアを占めるなか、後発となるファイアフライ社は小型ロケットにおけるシェア獲得を急いでいる。

これまで同社のALPHAロケットは、すべて米西海岸にあるヴァンデンバーグ宇宙軍基地(カリフォルニア州)から打ち上げられてきたが、2026年から東海岸の中部大西洋地域宇宙基地(ヴァージニア州、通称ワロップス)、さらに2027年からはスウェーデンのエスレンジ宇宙センターからの打ち上げも予定されている。今回の北海道スペースポートとの合意は、その延長線上にある。

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2024年7月4日に打ち上げられたALPHAの5号機。8機のキューブサットすべての予定軌道投入に成功(c)Firefly Aerospace / Trevor Mahlmann
2024年7月4日に打ち上げられたALPHAの5号機。8機のキューブサットすべての予定軌道投入に成功(c)Firefly Aerospace / Trevor Mahlmann

米国内での射場が増えれば、衛星を投入する軌道の自由度が増し、打ち上げスケジュールの柔軟性も向上する。また、射場を海外まで拡大すれば、その周辺エリアにおける顧客を獲得でき、国際的な競争力を強化できる。ファイアフライ社が北海道スペースポートなどを介し、日本のユーザーとのネットワークを構築すれば、アジア圏において圧倒的な優位性を獲得するだろう。とくに低予算な小型衛星の打ち上げを望む国内ユーザーにとっては、射場までの輸送コストや時間の低減は大きなメリットとなる。

また、北海道スペースポートが他の射場と比べて恵まれた環境にあることも、ファイアフライ社にとっては魅力のひとつだったはずだ。東と南に海が広がる北海道スペースポートからは、どちらの方位にも打ち上げが可能であり、極軌道への投入もできる。

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編集=安井克至

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