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2025.08.25 10:00

LINEで完結、集荷・送料も無料 540万人が登録する新「不要品インフラ」|ECOMMIT×LINEヤフー

川野輝之(写真左)・長谷川琢也(同右)

川野輝之(写真左)・長谷川琢也(同右)

Forbes JAPANでは2023年から、事業共創に挑むプレイヤーに光を当てる「クロストレプレナーアワード」を開催している。共創により、一社では成しえない価値の創出に挑む──。そんな思いを体現しようとするクロストレプレナーを全国から募り、5つのプロジェクトを表彰した。

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そのなかで、サーキュラーエコノミー賞を受賞したのは「宅配PASSTO(パスト)」だ。なぜ捨てる世界はまだ存在するのか。なぜリサイクル仕組みは整わないのか。リサイクルの空白地帯に、現場と発信が交差する共創の仕組みが立ち上がった。

8月25日発売のForbes JAPAN10月号では、5つのプロジェクトを紹介するとともに、事業共創の最新動向を解説している。


「リサイクル品が国内から海外へ運ばれると、現地では、使える部分だけ取り出しそのまま投棄され、有害物質も垂れ流し状態でがくぜんとしました」。

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2007年に22歳で「ECOMMIT」を創業した川野輝之は、中国でその現実を目の当たりにし“捨てない社会をかなえる循環商社”を掲げてすべての取引を見直した。不要品の回収、選別、再流通を自社で行う「PASSTO(パスト)」を23年にリリースし、自宅の不要品を回収するボックスを商業施設などに設置した。しかし、循環インフラとして機能するにはまだ不十分。そこで、配送会社との連携で自宅から出せる仕組みを模索し始めた。これにはサービスの認知度向上が必要だが、自社だけでは限界がある。川野は多くの顧客接点をもつLINEヤフーの長谷川琢也にアプローチした。

オペレーションと発信の両輪が機能する

当時、SDGsメディア「Yahoo! JAPAN SDGs」の担当だった長谷川は、サーキュラーエコノミーをテーマに発信を重ねていた。「採取した資源からの製造、販売といった動脈インフラは整っていますが、使用後の製品の回収、再生、循環させる静脈インフラがない」と、長谷川は実感していた。そして、LINEヤフー誕生を機に、ユーザー自身が行動できる場をつくりたいと、24年にサステナブルと友達を意味する「サストモ」へとリブランディング。「まさに静脈インフラの課題解決に向けて実践していたのがECOMMITだった」と長谷川は振り返る。2社は、24年秋に不要品を自宅から出せる「宅配パスト」の実証実験をスタート。LINEで友だち追加をしたユーザーがトーク画面から集荷を申し込める仕組みで、サストモは広報の役割を担った。小型家電や調理器具といった“必須アイテム”を入れれば、衣類なども同梱可能で、集荷も送料も無料。25年5月時点で登録者は約540万人にのぼる。

一方のECOMMITは、全国8カ所の循環に特化した物流センターで、回収品を約130分類に選別、データ登録し、リユース品とリサイクル品を選別する。川野は創業当初から、環境への配慮とマネタイズの両立を図り、属人性が強い選別作業の標準化やデータの自動取得など、オペレーションを磨き上げてきた。回収に“必須アイテム”を設けるのも、リユース品から売却益を得るためだ。「将来的には、回収したものを製造側に戻すことで、廃棄物も天然資源の採取量も減らしたい。これが当たり前になれば、メーカーも循環を前提としたモノづくり、売り方に変わるだろう」。

宅配パストの実証実験の結果、高い再資源化率を生ん だ。その手軽さが資源循環の意識を自然に醸成させた。
宅配パストの実証実験の結果、高い再資源化率を生ん だ。その手軽さが資源循環の意識を自然に醸成させた。

川野輝之◎1984年大阪府生まれ。建設機械等の輸出業者に就職後、2007年にECOMMIT創業。環境負荷の実態を憂い国内で選別する循環インフラ事業へ特化。(写真左)

長谷川琢也◎1977年生まれ。サステナビリティ関連のニュースやアイデアを届ける「サストモ」編集長。LINEヤフーに所属しつつ全国の地域活性化に関する多彩な活動に取り組む。(同右)

文=真下智子 写真=吉澤健太

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