リーダーシップ

2025.08.25 09:30

マイクロマネジメントを知り、排除する──チームを成功に導くリーダーの心得

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上司が部下の行動を必要以上に細かく管理するマイクロマネジメントは、大きなダメージをもたらすのに、職場に蔓延している悪習の1つといえるかもしれない。とはいえ、当のリーダーに悪意があるケースは少ない。「業務が適切かつ効率的に行われるようにしたい」との気持ちが強すぎるあまり、踏み込んだ行動に出てしまうことが多い。

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だが、マイクロマネジメントがプラスの結果につながることは稀だ。マイクロマネジメントは、信頼を損ない、創造性を破壊し、チームのエンゲージメントを下げてしまう。配下のチームに成果を求めるなら、解決策として選ばれるべきは、信頼の積み上げであり、監視の強化ではない。そして、職場からマイクロマネジメントを排除するためには、チームに権限を与え、より主体的に仕事に取り組んでもらうことが鍵になる。

マイクロマネジメントがはびこる理由

マイクロマネジメントに陥るリーダーが、チームの仕事ぶりを逐一管理することに喜びを見いだすタイプかというと、実際はそんなことはない。たいていの場合、根幹にあるのは不安だ。

リーダーは、結果を出さなければならないというプレッシャーにさらされている。加えて、チームメンバーの業務遂行能力を完全に信頼できない場合、「求める結果を得る唯一の方法は、業務プロセスのすべてのステップを自分が監督することだ」という思い込みにすがることになる。こうした不安は、プレッシャーの大きい環境や締め切りが迫る状況では、さらに高まることが多い。

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また、マイクロマネジメントが、経験から身に染みついた行動様式になっている場合もある。過去のキャリアで、部下としてマイクロマネジメントを体験していると、リーダー格の役職に昇進した際に、これが主導権を握る唯一の方法だと考え、かつての上司のパターンを繰り返してしまうのだ。

さらに、自分の行動がマイクロマネジメントにあたることを自覚してない者さえいる。それは、マイクロマネジメントが、絶え間ない進捗管理や、過度な状況報告の要求、あるいは、重要なタスクを部下に任せたがらないといった、それほどあからさまでない形で現れることもあるからだ。

しかし、その悪影響は明らかだ。上司がマイクロマネジメントの傾向が強いと、配下のチームは、自分には権限が与えられていないと感じ、ストレスに悩まされ、主体的に業務に取り組めなくなることが多い。

マイクロマネジメントは、成長や能力開発の後押しにはならず、むしろ抑圧する方向に働く。そのため、部下がミスを恐れ、リスクをとることをためらい、最終的には仕事へのエンゲージメントが下がってしまう環境が生まれる。

マイクロマネジメントの高い代償

マイクロマネジメントは、単に職場の士気に影響を与えるだけではない。生産性やイノベーションにも実害が生じる。自分の一挙手一投足が監視されていると感じる部下は、創造的な思考をやめてしまう。そして、ベストな仕事をすることよりも、ミスを避けて上司を喜ばせることに集中するようになる。

こうした態度は次第に、仕事の質と量を低下させていく。チームメンバーは、絶え間ない上司の監視に対応するために、受け身の姿勢をとるようになる──積極的に、新たなアイデアや解決策を提案してプロジェクトを前進させる姿勢を失ってしまうのだ。

マイクロマネジメントは、創造性を封じることに加えて、職場の不満を高める。部下たちは、自分のスキルや専門知識が信頼されず評価もされていないと感じ始める。これがいらだちや燃え尽きにつながり、最終的には離職してしまう場合もある。特に優秀な部下は、意思決定や意義ある貢献ができるような裁量権を与えられていないと感じると、活躍の機会を別の場所に求める可能性が高い。

一方でマイクロマネジメントは、部下だけでなく当のリーダーにも、同じように大きな損害をもたらす。部下の管理に、かけがえのない時間や気力が奪われるからだ。本来であればこうしたリソースは、戦略的な企画立案やチームの能力開発といったレベルの高いタスクに、もっと有効に活用できるはずだ。日常業務のささいな事柄にばかり目を向けていると、リーダーは大局を見失い、長期的な成長を牽引する機会を逃してしまう。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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