北米

2025.08.21 15:00

移民や留学生の受け入れなしでは「米国大学の多くが閉鎖危機」、雇用機会の減少も 報告書

教員職143人を解雇したウェストバージニア大学(Shutterstock.com)

教員職143人を解雇したウェストバージニア大学(Shutterstock.com)

米シンクタンクの米国政策財団(NFAP)の報告書によると、米国の大学の多くが移民や留学生を多く受け入れられなければ閉鎖に追い込まれる可能性があるという。そうした事態になれば、米国の学生にとっては学校の選択肢が減り、大学が立地する町の労働者にとっては、雇用機会が減ることになる。

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データは、米国生まれではない学生がいなければ暗雲が垂れ込めることを示している。留学生を含む現在の移民政策は、米国の高等教育の将来に影響を及ぼす。

NFAPの調査によると、「移民や留学生、移民の子どもがいなければ、米国の学部生の数は2037年には2022年から500万人近く減り、現在の約3分の2の規模になる。一方、大学院生数は少なくとも110万人減り、現在の約6割の規模にとどまる」という。

調査をまとめた米ノースフロリダ大学経済学部教授のマデリン・ザボドニーは、米国外生まれの学生が欠かせない理由をこう説明する。

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「米国の大学は『人口動態の崖』に直面している。2007年以降の出生率の低下により、米国生まれの大学に通う年齢の若者の数は2025年から減少に転じると予想されている」。ザボドニーはアトランタ連銀とダラス連銀の研究部門で、エコノミストを務めた経歴を持つ。

人口の変化は、米国の大学や大学周辺のコミュニティにとって試練となる。つまり、米国の政策立案者が移民を歓迎する政策を採用するのか、それともトランプ政権が反移民政策を貫くのかで、大学やコミュニティの将来が左右される可能性がある。トランプ政権はコロンビア大学に留学生への「依存度」を下げるよう求めるなど、教育関係者の目には留学生に対して攻撃的と映る措置をとっている。トランプ政権はまた、100万人以上の移民を強制送還するという目標を掲げている。

入学者減で移民と留学生の必要性が明らかに

大学に進学する米国生まれの人の数は、2025〜2029年に15%減少する可能性がある。分析によると、米国の高等教育機関への入学者数は2010〜11年にピークを迎え、その後、減少に転じた。

「学部入学者数の3分の1、大学院入学者数の5分の2近くを失うことは、多くの大学、特にすでに人口の減少が進んでいる地域に立地する大学にとって壊滅的な打撃となるだろう。多くの大学が閉鎖されて米国の学生の教育機会が減少し、多くの州や町で大学関連の雇用が減り、米国内の大卒労働者が減少することになる可能性がある」と報告書にはある。

閉鎖される可能性が高い大学はイェール大学やコロンビア大学といったトップ校ではなく、もっとランクの低いところだ。「地方大学や一般教養課程を主体とした小規模の大学、特に田舎にある大学が最も厳しい状況に直面する」とザボドニーは言う。米国人の学生も留学生も、有名大学への進学を希望するだろう。

「小規模で知名度の低い大学は、学生を集めるのが難しくなる。名の通った規模の大きな大学の入学率が上がれば、特にそうだ」とザボドニーは指摘する。「外国人の大学院生がより多くの研究リソースを持ち、学位取得後の就職に有利な大規模な大学に進学できるのであれば、地方の大学が外国人の大学院生を受け入れるのは特に難しくなるだろう」

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翻訳=溝口慈子

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