中小企業にも共創の流れ
中小企業でも共創の機運が高まっている。事業共創プラットフォーム「AUBA」を運営するei icon代表取締役社長の中村亜由子は「人口減少による視聴者数の低下が懸念されるケーブルテレビ会社だったり、EVシフトによって需要減が予想される油圧チューブの会社など、社会の変化に煽りを受けている企業が取り組みを始めている印象がある」と話す。
造園緑化資材などを手がけ、24年には創業100年を迎えた三重県の南出は、夏の猛暑や電気代高騰という課題解決を目指し、エアコンの室外機を冷却することで電気使用量を抑えるマットを新規事業として開発。JR西日本の神戸・京都エリアで共同実証実験を行った。結果、38%の電力消費減ができることがわかり、その後実施したクラウドファンディングでは目標額10万円に対し、約3600万円の応援購入があった。大企業で事業共創に取り組むという話はよく聞くが、その流れは中小企業にも来ているのだ。
こうした状況のなか、さまざまな共創プロジェクトを率いてきたトイトマ代表取締役社長の山中哲男は「オープンイノベーションが浸透し、理解が進んだ今だからこそ、どう社会実装するかが問われている。まさに今が転換点だ」と語る。そこで、Forbes JAPANが、NTTドコモビジネス(旧:NTTコミュニケーションズ)の事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」とともに2年前から開始したのが、クロストレプレナーアワードだ。
前回のアワードでは、新たな価値の創出に挑む象徴的な事例があった。生まれつき心臓に穴が空いた先天性心疾患の子どもを救う、心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の共同開発プロジェクトだ。先天性心疾患は、100人に1人の割合で起き、心臓の隔壁の欠損部をパッチで閉鎖する手術や血管の狭窄部を拡大する手術が必要だ。問題は、子どもの心臓の大きさが成長とともにピンポン玉大から8倍になり、パッチのサイズが合わなくなったり、異物反応で劣化したりすることにある。「もう一度手術するのはあまりに酷だ」。そう心を痛めた大阪医科薬科大学病院の小児心臓外科医・根本慎太郎は、10万点に上る生地サンプルをもつ福井県の繊維会社・福井経編興業と繊維大手の帝人と手を組み、身体の成長に合わせて伸長する夢のパッチを作り出した。24年6月の発売後は、全国の医療機関で170名を超える患者に使用されているだけでなく、海外展開にも着手。米食品医薬品局とすでに複数回協議を実施して米国販売に向けて活動している。世界の子どもを救う製品になりつつある。
今年のグランプリに輝いたアイガモロボプロジェクトは、有機米づくりにおいて課題となる除草を自動で行うロボットの開発販売に取り組んでいる。スタートアップのNEWGREENが機体の開発を、農機大手の井関農機が販売とアフターサービスを担い、すでに黒字化が視野に入っている。同時に東南アジアなど7カ国で実証実験を進めている。
イノベーション研究の第一人者である一橋大学名誉教授の米倉誠一郎は「日本には優れた製品がたくさんある。世界に展開していくには、それを単品ではなくトータルで売っていく事業構想が重要だ」と話す。事業共創プロジェクトのステークホルダーを増やしていったり、あるいは同じ領域の課題解決に挑むプロジェクト同士が結合したりすることで、より広範なマーケットをとらえたり、より大きな社会課題を解決できる可能性も生まれていく。
クロストレプレナーは、ただイノベーションを創出するだけではない。共創企業同士が対等な立場で交わることで新たな価値を生み出し、日本国内外の社会課題を解決に導く。


