ヘルスケア

2025.09.05 10:15

銀メダルなのに銅メダル以下に感じてしまう「比較」の心理学

Getty Images

私たちには、有名で成功した人と自分を比べるという困ったバイアスがあるが、それでもふだんは自分をひいき目に見て、自分は人より優れていると考える傾向にある。

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だが、自分は人より「恵まれている」とは、必ずしも考えない。これも、自己中心性のなせるわざだ。

学校に上がる前の子どもは、正確な比較を行うために必要な経験や精神的能力に欠けているせいで、自分を過大評価しがちだ。

大人の私たちは、子どもに比べれば謙虚かもしれないが、それでもほとんどの人が「自分は特別だ」と考え、平均以上の知性やユーモア、ルックス、信頼性、モラルを持っていると信じている。

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こうした数々のポジティブな錯覚によって、幸せを保っているのだ。統計学的には、「全員が平均以上」という状態はもちろんあり得ない。

私たちは傷つきやすいエゴを守っている

さらに困ったことに、私たちは、他人は考えが偏っているが、自分だけは客観的だと信じている。「あなたは平均以上のつもりかもしれないが、私が優れているのは事実だ!」と思うことで、傷つきやすいエゴを守っているのだ。

それでも、誰もが一貫して自分を過小評価する領域が1つある。それは、自分がどれだけ恵まれているかだ。

多くの人が「不当な扱いを受けている」と感じるが、それは、「平均以上の能力があるのに、正しく評価・理解してもらえない」と思っているからだ。

アメリカの労働者2000人を対象とした2022年の調査で、63%の人が「自分は正しく評価されていない」と答え、ほぼ同じ割合(59%)の人が「自分を評価してくれる上司を持ったことがない」と答えた。

これも自己中心性のしわざだ。

私たちは客観的な視点に立って、恵まれない人と自分を比べることはめったにない。むしろ、人の成功を軽んじたり、腹を立てたりする。

そうやって、過剰なエゴの仲間である、嫉妬や羨望の餌食になるのだ。

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文=ブルース・フッド/ブリストル大学心理科学部発達心理学教授、訳=桜井祐子/翻訳家

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