北米

2025.08.18 09:30

物議を醸す米国の新ビザ手数料、米経済に3年で1.6兆円の損失

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米国への非移民ビザ申請者に対して250ドル(約3万7000円)の「ビザ・インテグリティ料金」を課すことを決めた米議会の方針について、観光業界関係者は、米国から外国人観光客を遠ざけ、観光客の消費と税収の損失により今後3年間で約110億ドル(約1兆6000億円)の経済損失をもたらすと指摘している。

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米議会予算局(CBO)は、同料金により米政府の歳入が年間27億ドル(約3900億円)、今後10年間で約270億ドル(約3兆9000億円)増え、負債削減に貢献すると試算している。しかし、米観光当局者はフォーブスに対し、コンサルティング企業オックスフォード・エコノミクスの一部門であるツーリズム・エコノミクスの分析に基づいた見通しとして、同料金は今後3年間で米経済に110億ドル近く(年間約36億ドル)の損失をもたらすと述べた。これには、94億ドルの観光客消費損失と13億ドルの税収損失が含まれる。さらに米観光業界の試算によると、国内の観光関連職1万5000人の雇用が失われるという。

米国の観光業への影響は?

CBOと米観光業界の試算が大きく異なる理由は、CBOが手数料自体が生み出す潜在的な歳入のみに基づいて試算を行う一方、観光業界は手数料導入によるマクロ経済への影響を考慮していることにある。CBOは、年間約1100万人のビザ申請者から一人あたり250ドルを徴収することで、年間約27億ドルの歳入が得られると試算。観光業界関係者はこの議会の試算について、高額な手数料を課しても観光客数はほぼ変わらないという誤った想定に基づいたものだと指摘している。

ツーリズム・エコノミクスは、1人あたり250ドルの手数料を課すことで、外国人観光客の5.4%が米国訪問を思いとどまると推定。これは、年間約100万人近くの訪問者減少に相当する。観光客の減少は、消費の減少、ひいては税収の減少と観光産業における雇用喪失につながり、国全体に負の波及効果をもたらす。

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CBO報道官はフォーブスに対し、「議会予算局は長年の伝統として、従来の費用試算にマクロ経済的なフィードバック効果を組み込んでいない」と説明。「われわれはこの規定について、特に動的分析は行わなかった」と述べた。つまり、CBOは観光客の消費減少、税収減少、それに続く雇用削減による潜在的な負の経済的影響を考慮していないということになる。こうした要素はいずれも、米国の観光産業や商務省が米経済に観光がもたらす価値を評価する際の指標となるものだ。

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翻訳・編集=遠藤宗生

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