制作態様別に平均売上高をみると、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」では、2024年の平均売上高は27億4900万円で、4年連続の増加で過去最高を記録。ただ損益面では、「増益」が40%と前年から大幅に低下した。一方、利益を減らした「減益」は前年比5.2ポイント増の25.5%、「赤字」は同9.5ポイント増の34.5%となり、赤字と減益を合わせた「業績悪化」の割合は60.0%を占めている。これは、売上高を上回る制作コストの高騰に直面している現状を示している。

他方、下請としてアニメ制作に携わる「専門スタジオ」では、2024年の平均売上高は4億3800万円となり、4年連続で前年を上回った。「増収」は32.8%、「減収」は17.8%となり、「前年並み」(49.4%)が約半数を占め最も多かった。「赤字」は33.3%を占めているものの、前年から9.2ポイント減と大幅に改善している。

アニメ制作市場規模は過去最高を更新し続ける一方で、制作会社では売上高の増収ペースを上回る制作コストの高騰や人件費の増加、人材不足に伴う制作遅延といった問題が顕著になっている。コスト増を価格へ転嫁できない「利益なき繁忙」状態へ陥りつつある。また、依然として低賃金で働くアニメーターが多く、過度な長時間労働や不公正な請負関係など、長年にわたる業界全体の課題が国内だけでなく海外からも指摘されるケースが増えてきている。
日本のアニメがインターネット配信などを通じてグローバルコンテンツ化が進むなか、労働環境の適正化、品質維持、そして将来世代への技術継承といった課題にどう対応していくかが注目される。
出典:帝国データバンク「アニメ制作会社を対象にした調査」より


