フェイスブックの親会社にあたる米メタでは、企業カルチャーの混乱、ビジョンの欠如が人工知能(AI)人材の流出を招いた。最早ライバル企業は、メタのAI人材は精彩を欠くと評価している。CEOのマーク・ザッカーバーグは猛烈な採用攻勢に打って出たものの、離職を止められていない。
AI人材の宝庫だったMeta、深刻化する頭脳流出
メタはかつてトップクラスのAI人材が溢れる「宝庫」だったが、今やその面影はない。ザッカーバーグが派手な人材争奪戦を開始する数年前、同社には後に主要AI企業を創業するほどの研究者やエンジニアが在籍していた。Perplexity、Mistral、Fireworks AI、World Labsの創業者は、いずれもメタのAIラボ出身者なのだ。AIブームによって高性能モデルの開発競争が加熱するにつれ、かろうじて残っていた人材もOpenAI、Anthropic、グーグルといった競合に移籍した。
ここ数年の頭脳流出は厳しいものだったと、元メタのAI部門の社員3人がフォーブスに打ち明けた。「メタは最高の人材を抱えていたが、OpenAIに奪われた。マークは何とかして失った人材を取り戻そうとしている」と、ある元メタAI社員は証言した。そして現在も、ザッカーバーグが破格の条件を提示しているにもかかわらず、人材流出が続いている。
今日、優秀なAI人材を狙う企業にとって、現在のメタは引き抜き対象として魅力がない。シリコンバレー大手の関係者によれば、ここ数カ月の新規採用が始まる以前、メタの人材は自社の採用基準を満たしていなかったという。「マークが今採用している新しい人材なら興味を持つかもしれない。だが、以前からいる人材に関心を抱いたのは、ずいぶん前のことだ」と、ある有力AI企業の幹部はフォーブスに語った。
昨年の秋以降、グーグルがメタから採用したAI人材は20人にも満たない。事情に詳しい人物によると、同期間にグーグルが採用したAI研究者・エンジニアが数百人規模に上ることを踏まえると、この数字はごくわずかだという。「メタには最早引き抜くべき人材があまり残っていない」とこの人物は述べている。グーグルはコメントを控えた。
なりふり構わぬ高額オファーと、ライバルからの冷ややかな視線
そんな中、ザッカーバーグが、OpenAI、Thinking Machine Labsなどから人材を引き抜こうとする動きには、切迫感が漂っている。Thinking Machine Labsは、元OpenAIの最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティが率いる新興企業だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、彼は数億ドル(数百億円)規模の報酬、ほぼ無制限の計算資源を提示して勧誘しており、少なくとも2件では複数年契約で10億ドル(約1460億円。1ドル=146円換算)以上の報酬パッケージを提示したという。
ザッカーバーグは少なくとも18人のOpenAIの研究者を引き抜いたと報じられる一方、多くの研究者は彼の誘いを断った。OpenAIに留まるほうが、より大きな仕事の意義と株式のリターンが得られると見込んで残留した。
あるAI企業の創業者は、「メタはテック業界のワシントン・コマンダースだ」という痛烈な批判をフォーブスに明かした。これは、フリーエージェントの選手に高額な報酬を支払うNFLチームに例えた皮肉だ。「メタは、月並みレベルのAI研究者にも法外な報酬を提示している。それを見た外部の人々は、そんな高給をもらえるのだから、きっと世界最高峰の研究者に違いないと思ってしまう」とこの人物は続けた。
一方メタは、AI人材の採用や定着率に関する問題を抱えているとの見方を強く否定した。同社広報担当のライアン・ダニエルズは「事実を見れば、この話が成り立たないのは明らかだ。しかし、利害関係のある匿名の情報源が一方的な見方を広めようとしたことや、フォーブスがそれを掲載したことは止められなかった」と声明で主張した。
Anthropicのダリオ・アモデイCEOは、メタからオファーを受けたものの応じなかった社員と話したことがあると明かした。さらに同社は、そうしたオファーを理由に社員の給与を再交渉することはないと付け加えた。「ザッカーバーグが、偶然あなたを選んだからといって、それだけで、あなたと同じくらい優秀な同僚の10倍の給料をもらう理由にはならない」と、彼は先月のポッドキャスト番組Big Technology Podcastで語っていた。Anthropicはコメントを控えた。



