内部告発とLlama 4の失敗で表面化した、組織の亀裂
こうした指摘の多くは、メタの元AI研究科学者タイメン・ブランケヴォールトがAI部門の社内コミュニケーションチャンネルに投稿した、全9ページのエッセイ「メタの文化を恐れよ(Fear the Meta culture)」に反映されている。ブランケヴォールトは一般向けに公開したSubstackの投稿で、メタの社内の状況が「完全に脱線しつつあると感じていた」と記し、「多くの社員が落胆し、過労になり、混乱していた」と指摘した。彼によると社員は、経営陣の「ビジョンが揺れ動く」中で配属先を頻繁に変えられ、解雇を恐れていたという。
ブランケヴォールトはコメント要請に応じなかったが、社内向けエッセイがリークされた後の投稿で、この文書は社内の建設的な話し合いを促すためのもので、「怒りをぶちまける目的で書いたものではない」と主張した。メタ広報担当のダニエルズはブランケヴォールトの説明が「特に驚くことではない」と述べた上で、「私たちは、組織改革、リーダーシップ、研究分野の新規採用に積極的に取り組んでおり、画期的な研究のための理想的な環境づくりを非常に意欲的に進めている」と語った。
期待外れのLlama 4
メタのAIに対する評判は、4月のLlama 4の発表で打撃を受けた。このモデルは社内外で期待外れと評価され、推論能力、コーディング能力の低さが広く批判された。さらに事態を悪化させたのは、同社がLlama 4のベンチマークスコアを意図的に水増しし、実際よりも性能が高く見えるよう操作したとの疑惑だった(同社はこれを否定している)。元研究者の1人は「Llama 4は大惨事だった」とフォーブスに言い切ったほどだ。
現在、メタが華々しく立ち上げた「メタ・スーパーインテリジェンス・ラボ(MSL)」は、同社の取り組みの未来にさらなる疑問を投げかけている。「多くの人が自分の役割がどこにあるのか、自分たちが脇に追いやられているのではないかと感じている」と、その元研究科学者は語った。
金で動く「傭兵」か、使命を追う「伝道師」か――人材獲得で問われる企業理念
ザッカーバーグによる人材の引き抜き工作を警戒するライバル企業の間では、彼が狙っているのは高い報酬に釣られる「傭兵タイプの人材」だという見方が浮上している。これらライバル企業は、自社は信念を持つ者として「伝道者タイプの人材」を引き付けており、メタが狙う人材の対極に位置すると主張している。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは7月の社内向け書簡で、「業界全体がミッション志向であることを誇りに思う。もちろん、傭兵的な人も常に一定数いるだろう」と述べた上で、「伝道者は傭兵に打ち勝つ」と強調した。彼は、「OpenAIの株式は、メタ株よりはるかに大きな上昇余地があると信じている。しかし、その大きなリターンは大きな成功の後に得られるべきだ。私は、メタのやり方は深刻な企業文化の問題を招くと思う」と指摘した。OpenAIは、メタのプレッシャーに対抗するため、給与を調整し、研究・エンジニアリング部門に最大数百万ドル(数億円)規模のボーナスを支給したと報じられている。
Writerのメイ・ハビブCEOはこう語る。「テック大手は現在、私たち全員が目指しているAGI(汎用人工知能)のアウトプットを支配しようとする競争を、まるで傭兵のような発想で捉えている。そして、転職を考えている候補者から、彼らが去ろうとしている企業の社風について詳しく聞くにつれ、人間らしさが失われていると強く感じるようになった」。
あるAIスタートアップの創業者は、メタの社内で起きている「文化の変化」について語り、同社からの応募者が明らかに増えてきたと述べた。「私たちは、傭兵タイプよりも伝道者タイプの人材を採用している。そのため、候補者に20億ドル(約2920億円)もの報酬を提示したりはしない。そんな必要もない。そもそも20億ドルもの資金を捻出できない」と彼は話した。
メタが運営するフェイスブックも、新たな人材を惹きつける上で不利になりかねない過去の「負の遺産」を抱えている。この10年で同プラットフォームは、選挙への干渉、過激な投稿、誤情報、10代のメンタルヘルス・幸福に関する論争への対応に苦慮してきた。今回の取材に応じなかったルカンも、こうした汚点が同社AIラボに対する世間の見方に影響を与えかねないことを以前に認めていた。彼は2023年のフォーブスの取材で、「メタは、イメージの問題から徐々に回復しつつある。今はまだ、少しネガティブな見方が残っている」と語っていた。


