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2025.08.17 11:00

AOLがダイヤルアップを廃止、懐かしさと「まだ存在していたの?」の声

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1990年代初頭にAOLのアカウントを持っていた人なら、電話ジャックに差し込んだモデムでワールドワイドウェブに接続しようと待つあいだ、シューというノイズや静電気のような音、途切れがちなビープ音が交じり合う「交響曲」が響いていたのを覚えているだろう。その体験は間もなくインターネット史上の遺物となりそうだ。AOLは米国時間9月30日付でダイヤルアップ接続サービスと「関連ソフトウェア」をついに廃止すると発表した。

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「AOLは製品とサービスを定期的に評価しており、ダイヤルアップ・インターネットの提供を終了することを決定しました。このサービスは今後、AOLのプランでは利用できなくなります」と同社は米国時間8月8日の声明で述べている。

しかし、いまもダイヤルアップを使っているのは誰なのか

まず確認しておきたいのは、2025年の今もダイヤルアップ利用者が存在するのかという点だ。インターネット利用者全体の中ではごくわずかだが、ブロードバンドがまったくない、あるいは極めて限られている農村地域では依然としてダイヤルアップに頼っている人がいる。AOLを傘下に持つヤフーは、同社の利用者のうち何人がダイヤルアップで接続しているかについて明らかにしなかったが、米国勢調査局のデータによれば2023年時点で約16万3000世帯がダイヤルアップを利用していた。ヤフーの広報担当者はメールで「わずかなダイヤルアップ利用者には、所在地に応じた代替の接続手段を提案できる」と述べた。

AOLの発表にもかかわらず、ダイヤルアップが完全になくなるわけではない。しかし、大多数の人にとってモデム経由のインターネット接続は、インターネット黎明期の懐かしい記憶にすぎない。当時はAOLにサインインして「メールがあります(“you’ve got mail”)」と告げられるまで、高音の接続音を聞きながら数分(そう、数分)待たなければならず、その後ようやくウェブ閲覧が始まった。

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Xのユーザー、ジェフ・トンプソンは「ドアが閉まる効果音を鳴らしてくれ。インターネットの古参がログオフするのだから」と、投稿した。これは2017年に終了したAOLインスタントメッセンジャーで、誰かがサインアウトした際に鳴った「ガチャン」という音を指している。


ヤフーの広報担当者は、AOLが30年にわたり提供してきたダイヤルアップを「今日のデジタル環境のニーズに応えるために革新を進めている中で」廃止すると説明した。この決定は1つの時代の終焉を意味し、ネット上では郷愁から2025年にもダイヤルアップを使う人がいることへの驚き、56Kモデムからマルチギガビット接続への劇的な進歩への感嘆まで、さまざまな反応が広がっている。

マーケティングコミュニケーション専門家のアンディ・エイブラムソンは、「So Long to AOL Dialup.」(さらばAOLダイヤルアップ)と題したMediumの記事の中で「この瞬間が妙に感傷的に思えるのはノスタルジーからではなく、私たちの接続環境がどれほど劇的に進化したかを完全に示しているからでしょう」と記した。

AOL(2006年までは「America Online」と呼ばれていた)は、インスタントメッセージやチャットルーム、電子メールを通じてオンライン世界への入り口を提供し、1990年代に人気を博した。それは新しさと発見の時代であり、一般の人々が「インターネット・スーパーハイウェイ」がどれほど自らの視野を拡げるかを理解し始めた頃だった。初期のチャットルームやインスタントメッセージは、インターネットが文化を形成する無数の方法のほんの予兆に過ぎなかったのだ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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