スウェーデンに拠点を置く投資ファンドEQTのアジア部門、EQTプライベートキャピタル・アジアが、韓国のプロフェッショナルネットワーク運営企業Remember & Company(リメンバー・アンド・カンパニー)の支配株式を取得することで合意した。香港を拠点とするビリオネアのジャン・サラタが率いるEQT のアジア部門は、Rememberの企業価値を5000億ウォン(約550億円。1ウォン=0.11円換算)と評価している。
EQTプライベートキャピタル・アジアは8月11日、傘下ファンドのBPEA Private Equity Fund VIIIが、韓国の投資会社Ark & Partnersから非公開のRememberの持分を取得すると発表した。
Ark & Partnersは2021年、Rememberの評価額を2300億ウォン(約253億円)とした取引で、1100億ウォン(約121億円)を投じて株式約47%を取得していた。
Rememberの他の出資者には、韓国のインターネット大手Naverや、コスダック(KOSDAQ)に上場する求人プラットフォーム運営会社、Saramin(サラミン)が含まれている。
「Rememberは、韓国の人口構造の変化とAIを活用した人材マネジメントの普及という2つのトレンドが交わる時代の転換点に立つ、極めて稀で独自性の高い企業だ」とEQTプライベートキャピタル・アジアの韓国チーム責任者、ヨン・ダエアは11日の声明で述べた。
「当社は、世界の業界アドバイザーによるネットワークに加えて、社内のデジタル化やサステナビリティに関する能力を活用し、アジアを代表するHRテックプラットフォームを目指すRememberの試みを支援できることを嬉しく思う」。
2022年に組成された112億ドル(約1.6兆円。1ドル=146円換算)規模のファンドであるBPEA Private Equity Fund VIIIは、この取引によって運用資金の90〜95%を投資済みとする予定だ。同ファンドのRememberへの投資は、規制当局の承認を条件としており、第3四半期に完了予定とされている。
2013年に名刺管理アプリとして事業を開始したRememberは、5億枚以上の名刺データベースを保有しており、求人マッチング、ネットワーキング、企業向けの人材獲得支援などLinkedInに似たサービスに事業を拡大した。同社はまた、職場の課題・アドバイスを匿名で共有できるフォーラムも提供しており、2018年には日本にも進出して、ユーザー数は韓国と日本で合計500万人を突破している。
Rememberの創業者兼共同CEOを務めるチェ・ジェホは、別の声明において、今回のEQTによる投資が自身が創業当初に掲げた「アジア版LinkedInをつくる」というビジョンの実現を後押しするものだと語った。
EQTは、ここ最近HRテック分野への投資を強化しており、EQTプライベートキャピタル・アジアは昨年、オーストラリアのHRソフトウェア企業PageUp Groupを非公開の金額で買収した。さらに2023年には、日本の人事管理クラウドソフトのスタートアップ、HRブレインの過半数株式も取得している。
EQTプライベートキャピタル・アジアは、2022年にEQTがサラタ率いるBaring Private Equity Asiaを75億ドル(約1.1兆円)で買収した後に発足した。サラタはその後、香港を拠点にEQTのアジア事業を率い、EQTの経営委員会にも名を連ねている。


