過去3年のロシア・ウクライナ戦争はドローン(無人機)技術と対ドローン技術によって特徴づけられ、より優れたシステムを配備した側が戦場で戦術的に有利になってきた。ただ、ロシア軍とウクライナ軍は高度な電子戦システムを投入し、互いに相手側のドローン作戦遂行能力を制限し合ってきたため、ドローンの優位性をめぐる争いは膠着状態に陥った。
米国のシンクタンクである戦争研究所(ISW)がこのほど公表した報告書によると、ロシア軍は電子戦への耐性を高めた新たなドローンを投入することで、この膠着を打破した。ロシア軍がドローンの優位性を生かして戦術的成果の確保を急ぐなか、ウクライナ軍は対ドローン任務に特化したドローンを中心に、AI(人工知能)の導入を進めることで対抗しようとしている。この努力は最近、米国によるドローン自律制御キット「Skynode S「(スカイノードS)」3万3000個の供与によって大きく後押しされた。
Skynode Sとは
Skynode Sは、米国とドイツに拠点を置く防衛企業Auterion(オーテリオン)が開発したシステムで、ドローンに搭載するとニューラルネットワークとリアルタイム画像処理による目標の認識・追跡や視覚ベースの航法が可能になり、GPS(全地球測位システム)や外部の制御信号への依存を軽減できる。ウクライナの軍事ニュースサイト「ディフェンス・エクスプレス」は同社の説明として、ドローンの命中率を90%に高めることができ、ジャミング(電波妨害)環境下でも有効だと伝えている。
オーテリオンの発表によると、米国防総省との5000万ドル(約73億円)の契約に基づいて、Skynode「攻撃キット」3万3000個をウクライナに納入することが決まった。
By using an open architecture format, Auterion is able to bring customize the end users' ecosystem. We bring manufacturers of the best capabilities together on one network, allowing full customization of your fleet. pic.twitter.com/F1uWBkmC4U
— Auterion (@auterion) March 14, 2024
各攻撃キットは、小型ドローンに高度なAIとコンピュータビジョンを統合するコンパクトな機体搭載型ミッションコンピューターである。ヒートシンク(放熱器)付きの回路基板のみで構成され、大きさは49mm×39mm×21mm、重量は38g程度で、最大8個のモーターやサーボをサポートする。小型で汎用性が高いため、FPV(一人称視点)クワッドコプター(回転翼4つのドローン)から中型の固定翼ドローンまで、ウクライナの幅広いドローンに適合する。



