食&酒

2025.08.16 14:15

「辛くないガチ中華」大連の海鮮料理とレトロなこの街の路面電車

大連には海鮮を使った料理が多い。淡白な白湯スープの海鮮しゃぶしゃぶ鍋も人気だ

大連には海鮮を使った料理が多い。淡白な白湯スープの海鮮しゃぶしゃぶ鍋も人気だ

「ガチ中華というのは辛い料理ばかりなのですか?」

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これはガチ中華を愛好するSNSコミュニティを運営している筆者が、多くの人からよく聞かれる質問の1つである。

確かに、昨今のマーラータンブームがそうであるように、ガチ中華といえば、なにかと辛さや刺激が注目されがちなのは無理のないことかもしれない。

これまで多くのメディアでは、ガチ中華をその豊饒な多様性を秘めた社会的現象としてではなく、単に新しい食の1ジャンルとして捉えられてきたように思える。

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特に多くの場合、本場の四川火鍋や麻婆豆腐などのインパクトのある料理が取り上げられたことで、「ガチ中華は辛い料理」というイメージが先行してしまったのかもしれない。

日本人好みの大連の海鮮料理

しかし実際には、辛くないガチ中華もたくさんある。前回書いた「なぜ東京に中国東北料理店が多いのか? 戦後80年とガチ中華の関係」というコラムで紹介した東北料理がそれに当たる。

たとえば、同じ東北地方の遼寧省の大連の名物は海鮮料理である。市内にはシーフードレストランがたくさんあり、餃子の具に魚介やアワビなどを使うのが特徴で、美味な海鮮しゃぶしゃぶ鍋など、日本人も好むグルメの宝庫といえる。

今年3月上旬、池袋の「ムーさんの蒸鍋館」という大連出身の牟明輝さんの店で催された「海鮮中華と中国ワインの宴」では、次のような海鮮三昧のメニューが供された。筆者が主宰する東京ディープチャイナ(TDC)の主催で、大連風海鮮料理を味わう食事会を企画したのだ。

前菜
キュウリ、ピーナッツ、タマネギの和え物(拌三丁)
クラゲの甘酢和え(老醋蜇頭)
茹で海鮮の特製タレ漬け(撈汁海鮮)

焼き物・揚げ物
エビの串焼き(串烤大蝦) 
大連風カキフライ(炸蠣皇)

炒め物
海鮮素材のミックス甘辛醤油炒め(海鮮全家福)
イイダコとタマゴとニラの炒め物(八爪魚、韭菜炒鶏蛋)
木耳とタマゴ、ほうれん草入り春雨の炒め物(炒合菜)

蒸し物
ホタテの姿蒸し、ガリックソース仕立ての春雨のせ(蒸汽扇貝蒜蓉粉絲)
つぶ貝の姿蒸し(蒸汽海螺)

スープ
エイと豆腐のスープ(老板魚嫩豆腐)

主菜
蒸し魚の葱油かけ(清蒸海魚)

日本の煮魚に比べ、コクのある味わいの蒸し魚の葱油かけ(「ムーさんの蒸鍋館」にて)
日本の煮魚に比べ、コクのある味わいの蒸し魚の葱油かけ(「ムーさんの蒸鍋館」にて)

主食
豚肉とニラ、エビ入り水餃子(猪肉、韭菜、蝦仁三鮮餃子)
蒸気石鍋でつくる海鮮お粥(海鮮粥)

大連では水餃子の具材にサワラやイシモチ、イカ、アワビなどの海鮮を入れる
大連では水餃子の具材にサワラやイシモチ、イカ、アワビなどの海鮮を入れる

飲み物
中国のワインメーカー「張裕」の白ワイン

このように、さまざまな海鮮を使った焼き物や揚げ物、炒め物、蒸し物、スープが供され、そして主菜は筆者の好物の葱油を使った中華風蒸し魚だった。

さらに、蒸気石鍋という中国由来の調理マシーンによる強力な蒸気の力でエビやホタテ、つぶ貝などを蒸し上げ、そのダシでお粥をつくり、これを締めしでいただくという、かなり豪勢な趣向だった。

蒸気でエビなどを蒸し上げる「蒸気海鮮」は大連の人気料理(「ムーさんの蒸鍋館」にて)
蒸気でエビなどを蒸し上げる「蒸気海鮮」は大連の人気料理(「ムーさんの蒸鍋館」にて)

そして飲み物は、海鮮に合う中国の「張裕」という老舗ワインメーカーの白ワインを輸入会社の協賛で提供してもらった。ちなみに張裕は、1892年に山東省の煙台で醸造を始めた中国の近代ワインの最初のブランドである。

この食事会は、SNSの呼びかけで集まった約30名の人たちにも喜んでいただけたと思う。

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文=中村正人 写真=佐藤憲一

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