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2025.08.14 15:45

リスクの遺伝子:なぜ日本とアメリカは異なる思考を持つのか

多くの人々はリスク許容度を、考え方や選択、教育、自信、あるいは環境によって生まれるものだと考えています。しかし、もしそれがもっと深いところに根差しているとしたらどうでしょうか? もし私たちの中には、生まれつき他の人よりもリスクを取るように「配線」されている人たちがいるとしたら?

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科学的には、リスク回避には遺伝的な要素があるという考え方がますます支持されています。双子を対象とした研究やゲノム全体にわたる解析によれば、ドーパミンやセロトニンの調節に関わる遺伝子が、私たちが報酬や危険をどのように認識するかに影響を及ぼすことが示唆されています。リスクを取る行動は、単なる学習の産物ではなく、遺伝的にも受け継がれています。

最も良く研究されてきた変異の1つが、ドーパミン4受容体遺伝子(DRD4)内に存在する48塩基対のリピート配列です。なかでも「7リピート(7R)」型は、新奇性追求傾向や衝動性、さらには金融・社会面でのリスクテイクの高さと関連しています。興味深いことに、このアレルの世界分布は極端に偏っており、アメリカ大陸では染色体のおよそ48%に見られる一方、東アジア(日本を含む)ではわずか約2%にとどまります。

なぜ、こんな差が? 進化生物学の研究によれば、7R アレルの出現頻度は人類の移動距離に呼応しており、アフリカを離れて最も遠くまで旅した集団ほど7Rの保有率が高いことが示されています。中立的な遺伝的浮動を考慮に入れても、この傾向は変わりません。言い換えれば、この遺伝子そのものが「歴史上、最も遠くへ動いた人々」とともにヒッチハイクしてきたのかもしれないのです。

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重要なのは、7Rが単なる集団遺伝学上の例外的な変異では終わらない点です。会社を立ち上げる人々のあいだで、7Rは不釣り合いなほど高い頻度で見つかります。Nicolaouらによる大規模な双子研究では、7R保有者は自営業の経験を持つ割合がほぼ2倍に達することが示されています。さらに2021年の国際比較データセットでは、各国の7R出現率がアーリーステージの起業率の変動の約20%を説明していることが報告されています。

アメリカ合衆国は、より良い生活を求めてすべてを投げ打ち、より良い生活に賭けた人々が築いた国です。その決断は決して些細なものではありません。移民という行為自体が、家族や言語、文化、そして安全を捨てて未知の世界へ踏み出すという、極端なリスクテイクの形態です。代々にわたり、アメリカはリスクを取ることを厭わない人々が集まる場所となってきました。そこに何世紀にもわたるフロンティア開拓精神や起業家神話、そして個人主義文化が加わり、生物学的にも文化的にもリスク許容度が高い国になったのです。

さらにこの論理を一歩進めると、アメリカという国全体よりも西海岸のほうがリスク許容度が高いと考えるのは自然です。東海岸に到着した多くの人々が、そこからさらに西へ移動し続けました。カリフォルニアは一攫千金を夢見る開拓者たちや夢想家、そして現在ではスタートアップの起業家たちを引き寄せる磁石のような存在となりました。シリコンバレーの文化は偶然の産物ではありません。それは何世紀にもわたるリスクテイカーの移動が連綿と続いてきた結果なのです。

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文=James Riney

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