ビジネス

2025.08.16 13:15

社長秘書がIVS優勝!? 社長独占取材

「私たちの素材に投資するか、それとも年間300日エアコンを止めるか。」

advertisement

そんな一言で聴衆の心をつかみ、会場を沸かせたのがアドバンスコンポジットだ。

今回、IVSで見事優勝を果たした同社の代表に、独占取材の機会を得た。

社長でも役員でもない“秘書”がピッチ優勝

2025年夏、京都で開催されたIVS(Infinity Ventures Summit)のピッチコンテスト。登壇したのは創業者でも役員でもない、「社長秘書」と名乗る人物。スーツ姿ではなく作業着、顔も名前も明かさないその異質なプレゼンに、最初はざわめきが広がった。しかし話が進むにつれ、会場の視線は一気にその言葉に吸い寄せられ、気づけば拍手と歓声が巻き起こっていた。
アドバンスコンポジットは、最先端の複合材料を開発・量産し、素材の常識を覆そうとしている企業だ。ダイキンが株主として参画し、すでにPOCも進行中。これまで一切のメディア取材を断ってきたが、筆者との2年越しの付き合いがあり、今回取材を受け入れてくれた。

advertisement
アドバンスコンポジット社長の素顔(メディア初公開)
アドバンスコンポジット社長の素顔(メディア初公開)

法学部出身の創業者が素材開発に飛び込んだ理由

創業者の服部淳一代表は、東大や京大出身のエリート理系エンジニアではない。大学では法律を学び、企業法務に携わる人生を歩むはずだった人物だ。しかし、ある日出会った技術 「グラファイトとアルミを融合させた放熱素材」に心を奪われ、人生は大きく転換する。

「僕のような素人でも、一瞬で“これが未来を変える”とわかる技術だったんです。デバイスが高性能化するほど、熱の問題がボトルネックになる。その解決策になると確信しました」

素材開発に必要な設備や人材を、自らの資金で一から企業を立ち上げた。現在のアドバンスコンポジットの原点は、そんな一人の直感と行動力にある。

“否定から入らない”社風が10種以上の素材を生む

アドバンスコンポジットの研究開発の要は、70代のCTO林睦夫氏と製造開発部長・髙木義夫氏。だが驚くべきは、その下で活躍する若手たちの多くが高卒であることだ。

「うちは学歴で採る会社ではありません。大事なのは、素直さと、否定から入らないチャレンジングな姿勢です」と服部氏は語る。

創業初期、服部氏が「この素材とこの素材を掛け合わせてみて」と頼むと、「無理です。理論的に交わらないから」と技術者は反応した。だが、「やったことあるの?」と聞くと「ないです」と返ってくる。ならばやってみよう、この積み重ねが、新素材を次々と生み出してきた。
10年間で開発された独自素材は十数種類に及ぶ。現在も6種類の新材料が研究中で、「毎年のように奇跡が起きている」と語る社内では、挑戦と再発見が日常化している。

次ページ > 信じ切る者の言葉は、知識よりも強い

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事