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2025.08.16 11:15

植物は匂いで会話をして助け合う。「トーキングプランツ」のメカニズムとは

Getty Images

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植物は虫に食べられると、ある決まった匂いを放つ。それを受けた周囲の植物は害虫への抵抗力を高めたり、その害虫の天敵を呼び寄せる匂いを出したりする。植物同士はこのように「会話」をして助け合っていた。そんな相互作用を「トーキングプランツ」現象と言う。これまで謎だったそのメカニズムの一端が解明された。

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東京理科大学先進工学研究科生命システム工学専攻の有村 源一郎教授らによる研究チームは、トーキングプランツによる植物の防衛ネットワークを農業に応用する研究を行っている。これまで、いっしょに植えると害虫被害が減り成長がよくなる植物「コンパニオンプランツ」(共栄作物)はよく知られていた。たとえば、トマトとバジル、レタスとタマネギ、キュウリとネギなど、わかっている組み合わせも多い。

トーキングプランツはそれとは別の現象だ。食害を受けた植物が周囲の植物に向けて危険信号を発するというもので、その「言葉」が通じない植物には効果がないが、基本的に不特定多数の植物が対象となる。

研究チームは、バジルの一種であるブッシュバジルが放出する「オイゲノール」を鍵成分とする匂い(VOC)がインゲンマメの葉の防衛遺伝子を活性化させることを明らかにした。これによりインゲンマメのナミハダニへの抵抗性が高まり、同時に、インゲンマメはハダニの天敵であるカブリダニを引き寄せるVOCを発するという。

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トーキングプランツは農業への応用が期待されているが、これまで詳しいメカニズムがわかっておらず、実用化には至っていない。この研究では、ブッシュバジルが放ったオイゲノールが、インゲンマメの害虫防御に関連する病原性関連タンパク質1遺伝子(PR1)を増加させることが認められた。またその効果は、最大で7日間持続した。

さらに、インゲンマメの葉の上にハダニの雌の成虫を放ったところ、ブッシュバジルといっしょに育てたインゲンマメではハダニの産卵数が有意に少ないことが示された。また、ブッシュバジルといっしょに育ったインゲンマメがハダニの食害を受けると、ハダニの天敵チリカブリダニをより多く誘引することが認められた。もちろん、VOCがPR1を発現させるシグナル伝達経路なども解明された。

こうした科学的知見を積み重ね、トーキングプランツ現象を「現場で使える技術として根づかせる」ための基盤を目指すと研究チームは話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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