欧州

2025.08.12 09:00

ウクライナの優秀なドローン「リューティー」、ロシアへの戦略爆撃で戦果重ねる

ウクライナの徘徊型兵器「AN-196リューティー」とみられる無人機が飛行する様子=X(旧ツイッター)で共有された動画より

ウクライナの徘徊型兵器「AN-196リューティー」とみられる無人機が飛行する様子=X(旧ツイッター)で共有された動画より

戦略爆撃は現代戦のきわめて重要な要素であり、それによって敵の補給線を寸断したり、作戦を混乱させたり、あるいは士気をくじいたりする。ロシア・ウクライナ戦争では、ドローン(無人機)がこうした任務で中心的な役割を担っている。ロシアは大量の「シャヘド(ロシア名・ゲラニ-2)」を投入してウクライナ国内の目標を攻撃し、防空システムを消耗させている。一方、リソースに劣るウクライナは、もっと目標を絞ったアプローチを採用している。

advertisement

それは、ロシア国内の兵站拠点やエネルギーインフラをはじめ、重要度が高く脆弱な目標に精密打撃を加えるというものである。こうした攻撃を可能にしているのが、ウクライナが開発してきた徘徊型兵器群である。なかでも活躍しているのが「AN-196リューティー(ウクライナ語で「獰猛」などの意)」であり、ロシア国内深くの目標に対する数々の攻撃で使用されている。

リューティーとは

リューティーは2022年に、ウクライナ国営の防衛コングロマリット、ウクロボロンプロム傘下の航空機メーカーであるアントノウ(アントノフ)が開発を始めた。当初から、長距離の徘徊型兵器あるいは自爆型ドローンという触れ込みだった。リューティーは2023年末までに実戦部隊に配備され、2024年初めまでにロシア国内に対する複数の攻撃に投入されたとされている。

リューティーは重量250〜300kgかそこら、翼幅6.7m、全長4.4mで、後部に取り付けられた3枚ブレードのプロペラをガソリンエンジンで駆動する。特徴的な逆V字形の尾翼を備え、これによって機体の安定性が向上し、空気抵抗も低減されている。初期型は弾頭重量50kg、有効到達距離1000km程度だったが、改良型は75kgの弾頭が搭載可能になり、有効到達距離も2000kmほどに伸びた。価格は1機20万ドル(約3000万円)程度と推定され、これはロシアのシャヘドに比べるとかなり高いものの、巡航ミサイルよりははるかに安い。

advertisement

リューティーは長距離を飛行し、電子戦システムによる妨害を受ける環境で運用される可能性が高いため、遠隔操縦を前提とした設計にはなっていない。代わりに、飛行の少なくとも初期段階では衛星航法システムと慣性航法システムを利用し、目標に近づくと機械視覚(マシンビジョン)システムを作動させる。後者によって、複雑な飛行経路を実行し、敵のレーダー探知や短距離防空システムを回避して目標を精確に攻撃することが可能になっている。

次ページ > 石油施設や航空基地、兵站拠点への攻撃に投入されている

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事