サイエンス

2025.08.14 18:00

世界で最も個体数が多い猛禽類、日本にもいる「トビ」がもつ高い適応力

個体数は全世界で500万羽を超えるというトビ(Shutterstock.com)

生息環境は、開けた田園地帯から湿地、都市部までさまざまだ。都市部では、ゴミくずや小型の獲物を探して、ゴミ捨て場や市場、川岸の上空を帆翔している姿がよく見られる。こうした選り好みしない採食戦略が、ほかの猛禽類とトビとを分ける違いだ(ほかの猛禽類は主に、生きた獲物の狩りに特化している)。

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トビは、多様なものを食べることで知られる。動物の死骸、小型哺乳類、昆虫、魚、爬虫類。さらには、ほかの鳥から餌を盗んだりもする。

知能の高さと機敏さでも知られ、空中でほかの鳥から餌を盗むこともよくある。こうした行動は、労働寄生(盗み寄生)と呼ばれる。

餌を奪い合うトビ(Shutterstock.com)
餌を奪い合うトビ(Shutterstock.com)

『Journal of Raptor Research』で2008年に発表された研究によれば、ローマのゴミ埋立地にいるトビは、主に労働寄生に頼って食べものを獲得しており、観察された採食試行の75%超で餌を盗んでいたという。「盗み」の標的になるのはたいてい、数が多くて奪いやすいカモメだが、トビ同士で盗みあったりもしていた。トビの数が増えるにつれ、とりわけ繁殖期の後期には、こうした戦略がよく見られ、効果を発揮するようになったと研究者らは述べている。

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単独もしくはつがいで生活する多くの猛禽類とは異なり、トビはしばしば高い社会性を見せる。大きな集団をつくり、とりわけねぐらでは数千羽が集まって夜を過ごすこともある。そうした集団ねぐらでは、数の多さによる安全と、社会学習の機会が得られる。

移動するときには大きな群れをつくり、時には数千羽になることもある。その壮観な光景は、世界中のバードウォッチャーに愛されている。

猛禽類を有能なハンターにしている典型的な特徴は、トビにも備わっている。肉を引き裂くのに適した湾曲した鋭い鉤爪、鉤状のくちばしがある。視覚はすばらしく鋭く、空高くからでも、小型の獲物や死骸を見つけることができる。

長い翼と二又の尾から得られる機動性のおかげで、何時間も上昇気流に乗って帆翔し、長距離移動の際にエネルギーを節約できる。全世界での個体数が多く、広く分布しているトビは、広い地域をまたいだ個体群構造や渡り行動の差を研究するための貴重なモデルになっている。

次ページ > トビの成功の物語は、都市化に直面して数を減らしているほかの多くの猛禽類の運命とは対照的

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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