イスラエルの軍事作戦はイランの核開発の野望に大きな打撃を与えることに成功したかもしれない。だが、イスラエルが仕掛け、米国が支援した12日間のイランとの紛争は、いわゆる「権威主義の枢軸」のもう1つの国に実質的な利益をもたらす可能性がある。
中国はロシア産天然ガスを自国に追加輸送する新規パイプラインの建設に再び関心を示しているようだ。ロシア西シベリア北部のヤマル半島から中国に至る全長約2600キロに及ぶ天然ガスパイプライン「シベリアの力2」構想は長年にわたって難航していたが、ここへきて復活しようとしている。今秋予定されているロシアのウラジーミル・プーチン大統領の中国公式訪問の主な議題となることが予想されているのだ。
中国の関心は、中東からのエネルギー供給の信頼性を巡る新たな懸念の中で生まれた。中国の当局者が心配するのも無理はない。同国は液化天然ガス(LNG)輸入の約3割をカタールやアラブ首長国連邦(UAE)といった中東諸国に頼っているからだ。同時に、中国はイラン産原油に大きく依存している。中国は今年上半期、日量約140万バレルのペースでイラン産原油を輸入し、イランの原油輸出の約9割を占めた。こうした背景から、中国は中東からのエネルギー供給が途絶えることに対して極めて脆弱(ぜいじゃく)で、政府はそのような危機が実際に起こる可能性を警戒しているのだ。
実際、その可能性は残っている。最近の紛争の中で、イスラエルと米国の空爆に対する報復の一環として、イランはホルムズ海峡の閉鎖を検討したと伝えられている。イランは世界の石油の5分の1が通過する同海峡を妨害することはなかったが、中国政府は代替となる手段を探ることが賢明だと確信したようだ。
独カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのアレクサンドル・ガブエフ所長は米紙ウォールストリート・ジャーナルに、「不安定で予測不可能な軍事情勢により、中国指導部は安定した陸上パイプライン供給が地政学的利益をもたらすことを認識した」と説明。さらに「ロシアもそこから利益を得ることができるだろう」と述べた。



