確かにその通りだ。約3年半前にウクライナへの侵攻を開始したことで、ロシアはエネルギー資源の輸出先としての欧州市場を失った。ここで「シベリアの力2」パイプライン構想が復活すれば、ロシアにとっては願ってもない恩恵となるだろう。パイプラインの増設は、中国のロシア産天然資源への依存を高めるだけでなく、低迷するロシア経済に大きな収入をもたらす可能性がある。
ちなみに、2019年に開通した既存のパイプライン「シベリアの力1」は、ロシア東シベリアからアムール地方を経由して中国北東部まで2900キロ以上伸びており、現在では中国で消費される天然ガスの10分の1近くを輸送している。これに加え、中国は国内で消費される石油の約5分の1をロシアから輸入している。
新規パイプライン「シベリアの力2」が実現すれば、ロシアと中国の結び付きは一層強まるだろう。そして、それはまさに両国の間で築かれてきた「限界なき友好関係」を米国が破壊しようとしている時に実行に移されようとしている。
それでもなお、同パイプライン構想には大きな障害が残っている。ロシアと中国の間にはこれまで、新規パイプラインの所有権や輸送される天然ガスの価格を巡って意見の相違があった。専門家らは、「シベリアの力2」の建設が実現したとしても、完工までには5年以上はかかるだろうと見積もっている。
つまり、「シベリアの力2」はロシアの現在の悲惨な経済状況を即座に打破する手段にはなり得ないということだ。だが、もしそれが現実のものとなった場合、この新規パイプラインはロシアと中国の権威主義体制を結び付ける新たな絆となり、西側諸国の前に立ちはだかる複雑な問題となるだろう。


