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2025.08.22 16:00

AIの進化が非財務データに光を当てるーアスエネと東京大学の産学連携が描く未来

今、ビジネスとアカデミアの双方から、AI技術を活用した非財務データの分析に熱い視線が注がれている。同領域で、クライメートテックの旗手アスエネは、日本の知の拠点である東京大学とタッグを組んだ。アスエネでプロダクトを統括する渡瀬丈弘、同社にM&Aで参画した東大発スタートアップE4G創業者の小原大智、そして小原の恩師でもある東大の田中謙司教授に、産学連携で拓く「AI×非財務データ」の最前線と、それがもたらす未来の可能性を聞いた。


渡瀬丈弘(以下、渡瀬):今回、東京大学の田中謙司先生をお招きし、「AI×非財務データ」というテーマで議論していければと思っております。私はアスエネのCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)として、プロダクト全体を統括しています。アスエネは2019年創業のクライメートテック企業で、CO2排出量可視化AIクラウド『アスエネ』やESG評価サービス『アスエネESG』などを、日本のみならず米・英・東南アジアなどグローバルに展開しています。当社の累計資金調達額は106億円に達し、脱炭素・ESG経営におけるワンストップソリューションの提供を加速させています。

渡瀬丈弘 アスエネ 上級執行役員 CPO
渡瀬丈弘 アスエネ 上級執行役員 CPO

小原大智(以下、小原):E4G元代表取締役の小原です。私はもともと田中先生の研究室でAIや非財務情報の分析を研究しており、大学院1年次の22年に、AIを活用したESGデータの収集・分析ソリューション、脱炭素化ロードマップ策定支援を手がける「E4G」を立ち上げました。24年10月にはアスエネグループにジョインし、現在は同社で非財務情報の収集・分析サービスの責任者を務めています。

田中謙司(以下、田中):私は、東京大学大学院工学系研究科で教鞭を執っています。研究領域は、気候変動をいかに緩和するかという脱炭素領域をメインに扱っており、大きくいうと社会システム全体の最適化を目指す「総合工学」となります。データ分析や数理分析を軸に、そのツールのひとつとしてAIを活用するという立場で、小原さんのような学生たちと共に研究を進めてきました。

小原:E4Gは私にとって4回目の起業で、それまでの他領域での3社の失敗経験を踏まえ、自分の研究領域でもある電力やテクノロジーを掛け合わせたインフラ系の事業で挑戦したいと考えて立ち上げました。構想段階から田中先生には大変お世話になり、ビジネスの種となるアイデアをたくさんいただいて、それを私が実装して販売する形で事業を進めたのです。

小原大智 アスエネ新規事業開発部 マネージャー、E4G 元代表取締役
小原大智 アスエネ新規事業開発部 マネージャー、E4G 元代表取締役

田中:小原さんは学部生時代からビジネスプランに関する講義などに出席し、熱心に反応してくれていたことを覚えています。彼が研究室に入ってきたタイミングで、ちょうど大手製造業との共同研究として、工場の脱炭素化計画を策定するテーマを手がけていました。そこで、将来の起業の種になることも見越して、彼に担当してもらったのです。よく二人で食事をしながら「こんなサービスがあったらいいね」と話していましたが、小原さんはすぐに実際に動くサービスプロトタイプをつくって持ってきてくれたんです。そのなかのひとつに、非財務データに関するサービスがありました。

田中謙司 東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授、レジリエンス工学研究センター兼務
田中謙司 東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授、レジリエンス工学研究センター兼務

渡瀬:当社がE4G、そして起業家として小原さん個人に強く惹かれたのはまさにその部分でした。「AIを活用した削減施策の最適化」という研究領域はもちろん、それ以上に旧来のエンジニアとは全く異なる"AIネイティブ"である彼の思考の出発点に強く惹かれました。AIの活用を前提に物事を構想し、効率や実現可否の判断の視点が一段先を行っている印象を受けたのです。そのうえで、学生時代から日本の名だたる企業をクライアントにもつなど、確かな実績を上げていて、そのポテンシャルに惚れ込んだことからM&Aに至りました。

なぜ今、非財務データが注目されているのか?

田中:そもそも、なぜ今「非財務データ」がこれほど注目されているのか。アカデミアの観点から言うと、理由はふたつあります。ひとつは、地球温暖化という、何としても止めなければならない社会課題の存在です。21世紀に入り、その解決の役割は国だけでなく、民間セクター、特に企業の取り組みが極めて重要になりました。企業の真摯な脱炭素活動を正しく評価するためには、従来の財務情報だけでは不十分です。だからこそ、その活動内容を開示してもらい、消費者や投資家が判断材料にできる「非財務データ」が必要とされているのです。

もうひとつが、AIの進化です。この社会課題のニーズと、AIという技術の進化が重なり、これまで分析が難しかった非財務データにも光が当たり始めた。このふたつが大きな潮流となっています。

渡瀬:ビジネスの現場では、より直接的な理由があります。21年のコーポレートガバナンス・コード改訂、直近では、27年3月期から適用が始まるISSB(国際サステナビリティ基準審議会)をベースにした「日本版開示基準」の存在です。これにより、大手企業を中心にサステナビリティ情報の開示が実質的に義務化され、「やらなければいけない」という状況が生まれています。

しかし、現場では大きな課題があります。ひとつは、算定に必要なデータが社内のあらゆる部署、さらにはサプライチェーン全体に散在し、フォーマットもバラバラであること。もうひとつは、その散らばったデータを集めてきて、統一されたフォーマットに整えるだけでも多大な手間がかかるということです。この圧倒的な負荷をどう効率化するか、そのソリューションとして私たちのプロダクトの価値があると考えています。

田中:研究面の課題としては、そうした非財務の取り組みが具体的にどう財務的な成果につながるのかを明らかにすることが挙げられます。政策や規制によっても最適解は変わってくるため、非財務データの分析を通じて、さまざまな状況下で収益性に繋がりやすい取り組みとは何か、その関係性を解き明かす研究を、これから積極的に進めていきたいと考えています。

産学連携によって実現する長期的視座

小原:「AI×非財務データ」を進めるにあたって、私たちのようなスタートアップが東京大学のような学術機関と組む意義は非常に大きいです。産学連携によって、最新技術のノウハウを活用できるだけでなく、将来のルールメイキングなども見据えた次世代のため、という長期的な視点を得られるからです。ロングタームでの視座をもてるのは大学との連携があってこそだと思います。

田中:産学連携は大学側にもメリットがあります。私の研究室にはAIを応用したい学生が多数在籍していますが、学生たちにとって自分たちの技術を「何に使うべきか」という実践的なテーマは非常に魅力的です。学術界は長期的なテーマを追求し、企業は足元の収益を上げていく。この両者の視点をうまく両立させることが産学連携の難しさでもあり、面白さでもあります。

渡瀬:ビジネスの観点から産学連携の価値を補足すると、「価値を見つける幅の広がり」と「専門性の強化」の2点に集約されます。私たちは事業を通じて、世の中には出回っていない非常に多量で深い非公開データを保有しています。しかし、ビジネスの側面を重視するなかで、そのデータを深く分析しきれていない面があるのも事実です。そこに学術的なアプローチが加わることで、私たちだけでは気づけなかった新しい価値や視点、例えば、どの非財務指標が財務につながるのか、といったデータ間の本質的な関係性を美しく解き明かせると期待しています。

マーケティングの有名事例として挙げられる「おむつとビール」の相関関係のように、多様なデータから現場で役立つ小さな兆しや方法論を今以上に見つけられるはずです。産学連携はこうした多角的な価値創造を可能にしてくれるのです。

アスエネ
https://corp.asuene.com/


たなか・けんじ◎東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授、レジリエンス工学研究センター兼務。専門はシステム工学、エネルギー・環境経済学。民間企業でコンサルティング業務などに従事した後、2007年より東京大学に着任。気候変動や社会システムの最適化をテーマに、AIなどの数理分析ツールを駆使した研究に従事し、研究室ではスタートアップ創出も支援している。

わたせ・たけひろ◎アスエネ 上級執行役員 CPO。リクルートで受付SaaS事業「Airウェイト」などの事業責任者を歴任後、2021年にアスエネに参画。CPOとして、CO2排出量可視化AIクラウド「アスエネ」やESG評価サービス「アスエネESG」など、主力となる全プロダクトの企画・立ち上げから開発・推進を統括している。

おばら・たいち◎アスエネ新規事業開発部 マネージャー、E4G 元代表取締役。東京大学大学院工学系研究科在学中、田中研究室にてAIや非財務情報を研究。大学院1年時の2022年にE4Gを創業し、24年10月にアスエネによるM&Aでグループへ参画。現在は非財務データの収集・分析サービスの責任者を務める。

Promoted by アスエネ / text by Michi Sugawara / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro