欧州

2025.08.08 09:30

ロシア軍の死傷者は100万人規模とも 国内で世論の反発が起きないのはなぜか?

ロシアの首都モスクワで行われた祖国英雄の日の表彰式で、ウクライナ侵攻で軍人の夫を失った女性にあいさつする同国のウラジーミル・プーチン大統領(中央)。2024年12月9日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアの首都モスクワで行われた祖国英雄の日の表彰式で、ウクライナ侵攻で軍人の夫を失った女性にあいさつする同国のウラジーミル・プーチン大統領(中央)。2024年12月9日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は停戦に合意するよう圧力をかけられている。100万人規模の死傷者を出し、完全勝利が不可能と思われる戦争を続ける指導者はほとんどいない。しかし、プーチン大統領はロシアの石油・天然ガス施設に甚大な被害をもたらしているドローン(無人機)攻撃の応酬の終結には同意するかもしれないが、血みどろの地上戦は続ける可能性が高い。

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ロシア軍では1日1000人の死傷者が出ているとも言われているが、この厳しい数字は、プーチン大統領がこれだけの損失を受け入れ、結果を勝利と見なせることを意味している。なぜなら同大統領の計算では、人間の苦しみは考慮されないからだ。

ロシア軍の死傷者数はウクライナ軍をはるかに超える

ロシア軍の前進は遅々としており、莫大な費用がかかっている。ロシア軍が6月に占領したのは約490平方キロで、ウクライナ領土の0.1%にも満たない。

米カーネギー国際平和基金(CEIP)のマイケル・カウフマン上級特別研究員が最近ウクライナを訪れた際に指摘したように、現在では装甲車による大規模な攻撃はほとんど見られない。戦場ではドローンによる監視が行き届いているため、どんな動きも前線に到達する何キロも手前で察知され、ウクライナ軍の視界に入る前にドローンの大群が突撃部隊を襲うからだ。むしろ、ロシア軍はドローンの集中砲火を突破しようと徒歩で密かに前進し、ウクライナ軍の軽微な防衛線に侵入しようとしている。

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カウフマン研究員は、ロシア軍の攻撃は4~6人ずつのグループで行われることもあるが、多くの場合は2~3人ずつの小隊に分かれてウクライナ軍陣地の間を突破しようとしていると指摘。「ロシアの歩兵部隊はウクライナ軍の初期線を越えて可能な限り前進し、そこに塹壕(ざんごう)を築こうとしている。多くは失敗するだろうが、何人かは突破し、塹壕を築いて援軍を待つ。オートバイやバギー車による襲撃についてもほぼ同じことが言える。ほとんどは失敗するが、すべてではなく、戦略的には小さな前進につながる」と説明した。このように、多大な損失の割には成功の確率は低い。しかし、指揮官が十分な兵力を長い間前線に投入すれば、最終的には前線を動かすことができる。

一部報道によると、犠牲者の数はロシア軍の指揮官の誇りであり、地位を得るために失った兵士の数を自慢しているという。あるロシア人ブロガーによると、「この村を占領するために5人の隊員を殺した」と誇ることが典型的な指揮官の態度だ。

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翻訳・編集=安藤清香

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